TheWorldはただの子供遊びのゲームじゃない、ぼくはそう思ってる。
どこかの大人の人が、どこかの教師が、親が、なんと言おうが、この世界は美しかった。
現実離れした3Dグラフィック技術の発達と、現代におけるネットワークの状況が、
世界の人々の魂を奮い立たせた。発売日に売れに売れたネットワークゲーム。
背景にはさまざまな出来事と、人々の心が見えるに違いないだろう。
カイト、のプレイヤーは、見慣れた、青をバックにALTIMITと書かれた付属の壁紙から目を離し、
時計を見た。まだ時間は、怒られない位の時間だ。
中2だからって、遊んでて良い訳じゃないと散々言われたけど、この世界が、
このTheWorldの全てが自分を必要としていると思うと、止められなくなる。
・・・楽しいとかじゃない。確かに仲間達といるときは楽しいけれど、そういう意味ではない。
既に、呪われている、と言った方が正しいのかもしれない。
何人も人が意識不明になっているのも、サーバーがウィルスに侵食されているのも、真実だ。
そして、その出来事の真実に一番近い人間が『カイト』である限り、自分はプレイしなければならない、呪いだ。
彼は少し暗い気分になって、画面に視線を戻し、慣れた手つきでパスワードを入力する。
HMDを被ると、そこには見慣れた世界があった。
時刻は夕暮れ時。いつでも夕暮れ時であるこの街に時刻はあまり関係無いが、リアルの風景と似ていると、少しほっとする。
自分が生きていると、少しだけ感じられるから、かもしれない。
「カイト」
「ミストラル」カイトは、聞き慣れた高い声に反応して振り返る。「こんばんは」
「あ、そっかぁ」彼女はにこにこと微笑んだ。「もう夕暮れなんだねぇ・・・今日一杯遊んでたから時間忘れてた(^^;」
「今日はこれからどうするの?」カイトは作った笑顔で尋ねてみた。
「うーん」彼女は下を向き、苦い顔をしてたかと思うと、唐突に言った。「アセロラ、最近はまってるの」
「アセロラ・・・って、ドリンクの?」
「赤い実をつける、西インドのチェリーなんだって♪最近ドリンクになってるから飲んでみたんだけど、面白い
味っぽくて好きかな、って思うの。ビタミンCが豊富なんだぞぉ~vv」
カイトは目を丸くした。
「うわ・・・詳しいね」
「でしょ」ミストラルは、えへへと言いながら真実を口にする。「実は今、電子辞書で調べたの」
・・・その手があったか!
「今、カイト・・・すっごく暗かったから、たまにはこんな飲み物もいいかなって思って勧めてみたの。赤い
ジュースっていうのも面白いよ☆」先ほどと変わらぬ笑顔のままで彼女は話し続けた。「カイトは背負いすぎだよ」
「背負い・・・すぎ?」
「もっと、信じて。私とか、ブラックローズとかバルムンクとか、一杯いるんだよ、カイトの事たくさん心配してる人は」
・・・心配。
「無理しないでね。ビタミン足りないといろいろやばいから・・・」
「そっちのこと・・・??」
ミストラルは杖を両手でしっかり握って、少し悲しげに笑って見せた。
「カイトが辛いと、あの子も辛そう」もう少しで母親になる女性は、落ち着いた声でゆっくりと言った。「カイトが
沈んでいる理由を知りたいと思っているに違いは無いよ。自分に出来ることはないのか、必死に探してると思う
よ。あの子は結構、孤独で、人見知り激しくて、石頭で、鈍感で。だから打ち解けてあげて欲しい」
「自分が苦しいと皆にも影響する。ぼくには、悩むことも許されないのかもしれない。」
「なにを言っているんだ」
「あ、来た」カイトはちょっぴり弾んだ声で答えてしまった。「辛そうな顔してる」
「それはお前もだ」やってきたバルムンクは腕を組み、顔をしかめた。「随分、真実めいた抑揚だな」
「だって、真実に近いから・・・(笑)」
「俺は真剣にいろいろ考えたと言うのに」
「・・・(笑)」
「笑うな。」バルムンクは少し拗ねたように、カイトを睨むように見て言った。「俺の青春のひと時を」
「可愛いね」
「何がだ?」
「バルムンク」
「は!?」
蒼天の剣士は呆然と立ち尽くした、かと思うと、カイトに接近し、彼の肩に手を置いた。
「俺が真剣にお前の調子を心配してやっていたのに、お前の答えはそれか・・・」
「いいでしょ、たまには」
「お前にそうやって言われるのも悪くないがな」
二人の仲は深紅の色の果実のよう。
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