靄に包まれたエリアは存在した。見渡す限りの白さ、白、白、白。
地面は、氷が溶けた後のような湿った色。そこに、カイト達はいた。
「みんな、大丈夫?」
リーダーのかけ声に、ミストラルとバルムンクが答える。
「なんともない」
「真っ白いエリアだよねぇ~っ・・・見失いそうだったよぉ~(><)」
ミストラルがため息をついた。
その通り、見失いそうな天候。こんなエリアは他に無い。
「猛吹雪のエリアなら知っていたが」バルムンクが顔をしかめる。「霧は初めてだ」
「知ってる!それってザワン・シンだよね☆」
「ああ・・・もう、取扱説明書には存在しない天候だ。それにしてもこんな天気はありえない」
カイトは落ち着いて周りを見渡した。
こんな時、月長石とガルデニアのパーティーじゃなくて良かった、とも心底思う。
滅多に喋らない人とだと、こういうときのコミュニケーションが成り立たないから・・・
「あれっ?」
ミストラルが何かに気付いて杖を構えた。
「なんか来るよぉ~レアって感じするんだけど、触れたくないかんじかも」
霧の向こうにぼんやりと見えるのは、羽根の生えた何か。
「飛竜虫かなぁ?」
「うーん、あれはそんなオーラじゃない。虫じゃなくて、こう・・・人に羽根が生えたような」
「バルちゃんじゃん」
「俺じゃない!俺はここだ!」
「まさか、天使とか?」
そのとき、霧がゆっくりと動く。その流れはとても落ち着いていて安らかで、波の様だ。
白い霧が雲のように流れ、徐々に薄くなる部分から、向こうがかすかに見える。
その向こうに見えるのは、六枚羽の何者か――
「堕天使・・・!」
ザワン・シンのエリアの話のときに、聞いたような気がした。
エリアの中で、最強のスペクタルドラゴンを倒した時に見えたと噂される、幻影。
上も下も無い不思議な感覚の空間で六枚羽の堕天使を見たという、あくまでも・・・噂。
「Ω病める囚われの堕天使・・・そういう意味だったのか」
「こらぁ、楽しい事をひとりで納得してないでよ~」
「しーっ!」カイトは双剣を持ったまま、唇に指を当てて見せた。「静かにしよう」
二人は小さく頷いて、その方向をじっとみつめた。
太陽の光が差し込む。
暖かな金色と白色の交ざる日差しが、永久の氷を溶かすかのように霧を生み出している。
「靄の正体はこれか!」
「バルムンク、落ち着いて!」
背伸びをしたカイトがバルムンクの口を両手で押さえ、注意深く堕天使を見守る。
「さっき、ザワン・シンの話してたよね。」
ミストラルが小声で切り出した。
「バルムンクはその羽根のオプションを「ザワン・シン」イベントで手に入れた訳だから、もしかして、あの天使の羽根なんじゃない?」
「俺の羽は六枚羽か!」
「バルちゃんが飛竜虫の仲間入り・・・(笑)」
「そんな仲間は嫌だ!」
「バルちゃんは堕天使?」
「違うといってるだろう!」
何者かの六枚羽だけがくっきりとみえた。凍り付いているかのように蒼く、透き通っていた。
カイトは真剣な表情でぼそりとつぶやいた。
「やっぱり、あっちは飛竜虫の仲間かもね」
「すまん・・・取り乱してしまった」
「天使様にもテキストが必要だね(^^)」
「何のテキストだ」
「バルムンクよりカイトのほうが天使っぽいかも」
「えっ」
「カイト様お手本をお願いします」
「ぼく知らないよ(笑)」
「(カイトにオプションついてたら可愛いのに)あはは」
カイトに天使の羽がついた姿を想像して笑う、ミストラル。
そしてその横で無表情で立っているバルムンク。
「(バルムンク、何想像してるんだろう)」
PCが無表情という事は、今ごろ笑い転げているかなんかなのかな?
そのころ、リアルのバルムンクは。
「カイトが天使っていうのも良いかもしれないな」
・・・・・・にやけていたのは言うまでも無かった、ようだ。
PR