俺の、カイトを見る目が変わったのはいつからだろうか。
まず一回目。
普通のプレイヤーから「憎きチートPC」になった。
リョース同様、石頭と散々呼ばれたあの頃の俺は秩序と正義に駆られていた。
二回目。
憎きチートPCから「信頼できる大切な仲間」になった。
カイトの考え方、優しさ、意志の強さ・・・いろいろ考えさせられ、俺も変われたのではないか。
―――三回目。
ログアウト出来ない・・・・・・
それが、今の彼らの悩みだった。
何をしようにも、このPCの身体が自分の身体であるがために、何かと不自由なのだ。
そんな夕暮れ竜を求め旅立ちし者達は、今。
Δサーバー マク・アヌ
・・・路地裏。
「まさか、こんなことになるなんて、思ってもみなかったよ」
カイトが苦笑する。その横にはバルムンクとブラックローズがいる。
「アタシだってびっくりしたわよー」彼女は続ける。「でも、もう慣れたかも(笑)」
ブラックローズの陽気な様子を見て微笑んだバルムンクは言った。
「PCを身長と同じくらいにしたお陰で、苦がないから、これもいいかもしれないな」
「・・・どうしよう、ぼく、ちょっと、言われてみたら大変な事に気付いたかも
「何、どうしたのよ」
「それが・・・」
カイトは言いづらそうに小声になった。
「ぼく性別違うから、身体がどうも慣れないんだよ」
「「何ーーーーーっ!!?」」
「ご、ごめん・・・隠すつもりは無かったんだけど、ぼく、女です・・・」
「カ、カイト・・・あんた・・・」
いつになく真剣なブラックロ-ズの眼差しにどきりとして、ひかえめに返事を返す。
「な、なに?」
「気を付けなさいよっ、そこらの男に襲われちゃたまらないわ!」
「は」
「バルムンク、いい?」
彼女は燃えている。この状態では、誰であろうと止められやしない・・・だろう。
「今からアタシはログアウトの方法尋ねにヘルバの所に行くから、カイトのこと、任せたわよ」
そう言うが早いか、彼女はさっさとカオスゲートに向かってしまう。
「ブラックローズ・・・なんで一人でいったんだろう・・・」
カイトはぼそりとつぶやいた。
「ヘルバにその話を聞かれたくないから一人で行ったんじゃないのか?」と、バルムンク。
「そんな・・・。ぼくなんかが女だってみんなにバレたって、大した影響は――」
「ある!!!」
「はい?!」
バルムンクは血相を変えてカイトに近づいた。
「今だからこそ恥じなく言えるが、俺はおまえを愛している!
だから、他のみっともない者共におまえを渡す訳にはいかん。PKする気でおまえを守る!」
「ぴ・・・PK・・・っていうか、愛してるって、バルムンク・・・本気?」
カイトの「嘘でしょ?」なオーラを無視して、蒼天の石頭は燃える。
「本気だ。おまえが男ならこんなことは言わんが、女なら遠慮なく言うつもりでいた」
くすくすとカイトの笑いが聞こえる。
「びっくりしたー でも、ぼくもバルムンクのこと好きだから!なーんて」
がばっ!
「うわ!」
バルムンクがカイトを力強く抱きしめ、耳もとで囁く。
「悪いが、なにもなしに帰すつもりは無いからな」
その言葉に動揺したカイトは、バルムンクを引き剥がそうとする。
「だめ?」
「だめだ」
「バルムンクってば、我が侭なんだから(笑)」
―――そのころ、ネットスラム。
「この現象は・・・分からないわね」
ヘルバの声に、落胆したブラックローズのため息が重なった。
――カズを助け出すどころか、アタシが意識不明者に仲間入りなんてぇ・・・
「ありがと、何かわかったら教えてね」
彼女はやる気の無い声で返事をし、マク・アヌに向かうことにする。
「お待ちなさい」
体勢一つ変えずにヘルバが引き止める。ブラックローズはゆっくりと振り返った。
「少し、今回の事件についてお話しましょうか」
「・・・望む所よ。」
ブラックローズが遅い。
そして、今、自分はこの男に抱きしめられたままの状態で路地裏にいる。
バルムンクの肩にコツンと頭を乗せ、カイトは尋ねた。
「ぼくのこと、いつから好きだったの?」
「仲間になって、幾つもの出来事をクリアしていくうちに、特別な感情を抱くようになったよ」
「ぼくが男だったら、どうしてたの?(苦笑)」
しばしの間、彼は返答に困った。
「一番の相棒としてずっとTheWorldで共に生きるつもりだった。
心の底では、カイトが女である事を願っていたというのもあるな」
――どっちにしろぼくの事しか考えてないじゃないか・・・
「ログアウト出来るようになったらその時は」
バルムンクはカイトの髪を撫でた。
「会ってくれるか?」
「もちろん」
*おまけ*
「バルムンク、もうそろそろ離してくれないかな…」
「お前と一緒にいたいだけだ」
「台詞がクサい(笑)」
「田中わび助と一緒にしてくれるなよ(笑)」
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