煌めく情熱と、お人よしな性格と…若さだけがそうさせるのではない。
城之内の性格は歳をとろうと変わらないだろう。
冷めた孤独な自分になにか大事なものを思い出させてくれた大事な人が城之内なのだと認識するに、そう長い時間はかからなかった。
ただ、大分年下な人間に興味を持つなんて思いもしなかっただけだ。
自分は年上のダンディでびしっとした男と肩を並べるのかもと思い込んでいたのだから。
年下なんて、ガキなだけ。
そう思っていたのに、生意気なガキに惚れた自分がいる。
世の中は奇天烈で、予想外なことが沢山あるんだなと思ったのはこれが1番大きかった。
彼は私の目と心を捕らえて放さない。
予想外な面白いことを言っては笑わせてくれるのがいつも嬉しくて期待してるなんて言えない。
「みえないけどみえるもの、なーんだ!」
城之内がそう言うので、不思議に思った舞は聞き返した。
「え…逆じゃなくて?」
「そう、逆じゃなくて」
逆なら自分たちが出会った頃にあった会話のひとつだが、一体なんなんだろう。
見えないってことは目をつぶっていてわかるということだろうか?
「勿体振らないで言いなさいよ」
「ふっふっふ、それはな」
こんな会話をしていられるのも、この世にはいない遊戯…ファラオのおかげである。
自分がペガサスの王国で遊戯を狙い、目をつけたことから始まった。
遊戯は城之内同様、自分に大切なことを思い出させた。
気高きファラオがいなければ自分は一介のデュエリストに終わり、決勝に進むことなどできなかっただろうに。
城之内の顔がにやっと砕けた。
「愛だ!」
かあっと自分の頬が赤くなるのを感じた。
とっさに手で頬をおさえる。
「な、なによそれ」
「普段は目に見えなくて溶け込んでるのに、考え事をすると舞のことが過ぎっちまう」
同意したかったが恥が勝って頷けなかった。
「目に見えるものには舞が強いのに、目に見えないものになると途端に可愛くなっちまうんだもんな、舞は」
「ちょっと…!か、からかうのやめなさいよ…」
城之内の目が優しくなる。
「舞とはいろいろあったよなぁ」
初対面で色気と外見に騙されたあいつは、男らしくさっぱり豪快な態度を見せたらババア呼ばわりするし。
共通の嫌な奴を倒してから仲間ごっこを一晩。
それから城で参加券を盗まれた城之内にカードをわたして…。
賑やかな声に見上げれば、空には不機嫌そうな海馬瀬人となだめる弟、ぎゅうぎゅうにヘリに乗った¨仲間たち¨をみつけたあの時から、変われた自分を認識したのかもしれなかった…。
「ねえ、城之内」
舞は城之内に優しく話しかけた。
「あたしたちは、幸せでいいんだよね?」
なにが幸せじゃいけないのか自分でもわからなかったが、不安だったのだからしょうがない。
「幸せでいけないわけ、ないだろ?」
「そうよねー」
二人でこうしてくだらない話をして、励ましあって、笑いあっているのが幸せなんだ。
お互いさらけ出して、お互いのすべてを愛し合ってることって幸せなんだ。
「…ノロケは社外でやれよな~」
「うぎゃああああ!」
モクバが呆れた目で見上げていた。
「オレが入ってきたのにも気付かないでノロケてるおまえらなんて兄サマには見せられないぜ…」
「そんなことは…」
「だって兄サマ、遊戯が冥界に帰ってからどうしてると思う?」
舞は思った。
海馬瀬人は他人に興味を抱かないが、例外が遊戯だったのだ。
詳しく知らないのでわからないが、突然城之内に会えなくなった自分のようなものと考えたら事態は深刻だった。
「オレがでてきてよかったぜ。
兄サマが来たらおまえら、リアルに殺されかねないぞ?」
やはり、事態は深刻なようだ。
「え、兄サマが心境を語る相手なんているわけないだろ…。
遊戯がいれば、遊戯が1番兄サマの考えてることに詳しかったんだけどな」
「海馬が遊戯のことばかり考えてるってなんでわかるんだ?」
「だってよ、遊戯から預かった鎖を身から離さないんだ。
風呂も、寝るときもだぞ。当然起きてるときも。
これだけで十分すぎるぜ…」
鎖というのは千年パズルのついていた鎖のことである。
彼のデッキはあちらの遊戯が預かっているが、遊戯も気をきかせたのだろう。
話を聞いたところ、遊戯の次に王の座を継いだのは海馬の前世であり、記憶の世界ではパズルと紐ごと手渡されたらしかった。
いまやパズルはない。
それでも鎖を首にかけて、見えないパズルの存在を信じるかのように不在の彼との絆を確かめているのだろうか?
「海馬がそんな状態だなんて想像もできねえ」
「オレだって初めてだよこんな兄サマ…」
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