「麓にはいないみたいねぇ」
この辺出身で詳しいというメッキーがぐるっと回って偵察してきて首をかしげた。
「まさか火山の中かも…」
「メッキー、案内してくれ。プックルは一番最後でフローラの背中を守って」
「グルル」
プックルが私の足に頭を擦り付けてきた。
ほんの少しの間なのに大きな動物に懐かれるというのは初めてで不思議な気持ちになった。
毛皮のフードはやめたほうが良かったかなと汗を拭きながら思った頃、ランスアーミーと炎の戦士に囲まれた人影を見つけた。
「アンディ!」
私の叫び声を聞いたメッキーが冷たい息を吐いて敵を振り向かせると、リュカが駆け出すと同時に私の後ろにいたプックルがそれを抜かすように飛び出してランスアーミーを押し倒した。
「バギマ!」
炎の戦士の勢いが弱まった所に剣と牙が襲い掛かって止めを刺した。
ひどく焼け焦げたアンディにリュカがベホイミを唱えると、少し痛みがひいたのか、アンディが熱にうなされながら私の名前を呼んでいるのがはっきりとわかった。
「…アンディ」
「プックル、メッキー。フローラと一緒にルーラでサラボナに戻って彼を届けてくれ」
「リュカは!」
「僕はリングをとってくる」
「私も行かせて」
「でも」
リュカの気遣うような目がこちらを見ている。
「荷物になるかもしれない、けど、回復くらいはできるわ、行きたいの」
自分に自信はない。修道院にいたにも関わらず本と神と向き合う日々で、目の前の人を助ける魔法はベホイミしか得ていなかった。
「荷物だなんて思ってないよ。さ、一緒に行こう」
二匹にアンディを任せて歩き始めてしばらくすると、リュカが言った。
「アンディを助けたら帰るっていうのが本来の目的だったから、フローラも帰るかなと思ったんだけど…」
「あなたが炎のリング取りに行くなんて言わなければ帰っていたわ」
どうもリュカ相手だと昔を思い出して、子供のように張り合ってしまう。
「なんで取りに行くなんて言い出したの?」
リュカが言うのを躊躇するような顔で歩みを速めた。
「あれを倒せたら、話す」
と言って目の前に現れた溶岩のような奇妙なモンスターに駆け出していった。
3匹の溶岩原人との戦いは激しかった。
スカラやバギマを使いこなすリュカでも苦戦して、私は遠くから回復することしかできないしで本当にどうなることかと思いもした。
けれど、幼い頃から書いていたリュカの冒険の記録でリュカは負けなしだった。
私が聞いた限りではリュカが負けたのはゲマただ一人だけだった。
溶岩の海が静かになって、岩場にきらりと光るものを見つけた。
その岩場までの溶岩の海には、先ほどの魔物の死体が冷えて固まって出来た土の橋のようなもので渡しが架かっていて、足を乗せても平気そうだった。
リュカに手を引かれてのぼり、岩場にしゃがんで光るものを手にした。
「これが炎のリング?」
受け取って手のひらで転がしてみた。
紅い水晶に金の輪がついた確かに綺麗な指輪だった。
この溶岩の岩場にあったにも関わらず傷一つなくて、魔法でもかかっているのだろうかと思わされた。
ひょいと私の手の中からリュカの指がリングを持ち上げ、両手で私の手を掴んだ。
「フローラが許してくれるなら」
急に話し出したリュカの目はいつになく真剣だった。
「僕はこのリングを持って…ルドマンさんにフローラが欲しいと言いたい」
「えっ…?」
「だめ?」
「え、ええっと、その…リュカが、私を?」
暑さでなのか恥ずかしさでなのか顔が熱くなるのを感じた。
彼は言い辛いのか少し目を泳がせて、
「他の男のために無茶してほしくないんだ、無茶するなといってもきみはなんでもしようとする人だから、その、僕ならきみが無茶しても側に居て守ってあげられるから…僕も無茶ってヘンリーによく言われるし。
きみは優しくて、人のために無茶なことしようとして……うん、それでいて案外用意周到な所がほっとけないと思った」
告白されているはずなのにおかしくてつい笑ってしまった。
「真面目に言ってるのに」
「ありがとう、私も、何かするならリュカのためがいいわ」
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