金を貴重とした神殿、王の間に彼はいた。
辺りは暗く、夜。彼は一人星を眺め、暇を潰していた。
「ファラオ」
神官が一人、恭しく礼をして入ってきた。
手に携えた千年ロッドが怪しく光を発している。
「セト・・・なんの用だ?」
「何用もなにも・・・話に来ただけでございます。」
セトはファラオと呼んだ彼をまっすぐに見つめると、話を切り出した。
「あの盗賊王バクラによる無礼な行動・・・今後も続くと思われますが
いかに対処すべきでしょうか。」
「・・・・・・セトはいつもそのようなことを考えているのか?」
「は・・・?」
彼は階段を下り、同い年にしては自分より身長のありすぎる彼の前まで来た。
そして再び口を開いた。
「寝る間も惜しんでそんな事を考えているのか、と聞いてるんだ。」
「それは・・・我々はファラオとお国を守るべく見を削る思いで常に・・・」
「神経質だな、セトは。この前のようにオレが出ればいいじゃないか。」
「それでは我々が貴方を守っている事になりませぬ。」
彼はふっ、と笑った。
「オレはまだ子供だが・・・国王だ。お前達を守るのは当然だ。
たまには甘えてみたらどうだ、セト。ひとりで抱えるなよ。」
彼はマントをひるがえし、部屋に戻ろうとした。
「お待ちくださいファラオ。今宵、私の修行に付き合っていただけませんか。」
「ああ、かまわない。じゃあ庭裏の闘技場で・・・」
セトは首を振り、言った。
「いえ、馬で川辺まで行きましょう。私が馬を走らせましょう。」
馬は走った。
明かりがなく道標もない、道無き道を。
「セト、この格好はなんとかならないのか?」
馬の背に彼を乗せ、セトが後ろに乗る。
手綱はセトが持ち、彼はセトに抱かれる格好となっていた。
セトは言う。
「ファラオは馬乗りが苦手であるはず。私の方がスピードがでますからね。」
そこじゃなくてなぁ、と彼はため息をつく。
川辺が見え、馬を止めた。
二人は馬を降りた。彼は言った。
「で、なんのつもりだ。本当は修行ではないんだろう?」
「勿論です。では、お聞きします。
いろいろ私に御意見をくださりますが、どういう意味で私をお目にかけて下さっているのです?」
彼は笑って言った。
「お前が神官になって、オレがファラオになって。お前はオレのライバルみたいなものだからさ。」
セトは微笑んだ。
「ライバル・・・ですか。もし貴方を私が裏切ったとしてもですか。」
「オレとお前は戦う宿命だ。でも、ライバルだけじゃなく仲間でもあるからな。
別れてもまた出会うさ。お前はオレの大切なヤツだからな。」
「ありがたいお言葉です。」
川辺はきらきらと輝いていた。
朝日が来るのはまだ遠いのに・・・星の光だろうか。
それとも・・・未来の光だろうか?
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