白い壮麗な城は明るく、海底にあるとは思えぬ光に満ちていた。
銀色の長い階段を上ると、蓮の咲いた王座から声がかかった。
「イズュラーヒンとその仲間たちよ、あなたがたが来ることはわかっていました」
「ルビス様」
紅蓮とも桜とも見える紅いやわらかな長い髪が、水の反射するきらめきで気のせいか一瞬青色に見えた。
翡翠色の柔和な瞳がゆっくりとまばたきをする。
純白のローブを纏った女神は、一同が全員階段を上りきると、わかっているにも関わらずあえてたずねた。
「今日はどうしましたか」
「…わかっているのに聞くんですね」
イザは苦笑した。
ルビスは困ったように微笑んだ。
「わかっていても、先に言ってしまっては、歴史が変わってしまいます」
「ああ、そうでした」
「ルビス様」
ミレーユが口を開く。
「昨日、わたしとテリーの所に、銀色の髪で耳の尖った男が現れて、わたしたちは人でないと…わたしたちは神々につくられたのだとか、実験台なのだとか…。
本当の親を知らないくせにとか言ってきました。
オカリナを作ってくださったルビス様なら、わたしたちの本当の親を知っているのではないかと思って」
「…」
ルビスは目を閉じた。
数秒後、ルビスはためらいがちに口を開いた。
「話すときが来てしまったようですね。夢の城にある卵と、新たな世界の話を.
昔、ムーという国がありました。人間の王国です。
この国は神々からさずかった魔法の玉を使って強力な武器を作り、世界中を我が物にしようとしていました。
神々との約束で、人と戦うための武器は作ってはならないとあったはずなのですが、彼らは欲に負けて破滅の道を選んでしまいました。
人だけでなく、人が増えるにしたがって、エルフやドワーフのような別の種族は追いやられて数を減らしていきました。
神々はムーを滅ぼすことに決めましたが、魔法の玉を使わずに神々のための武器を作ることを条件に清い心を持った者は救うことにしました。
人間の鍛冶職人は自分の力では硬すぎる金属を強化できません。
そこでドワーフの力を借りました。
今度は火の温度が上がらなくて金属が溶けません。
そこでエルフの力を借りました。
人間とドワーフとエルフは協力して神との約束を守ることができました。
彼らは共に生きることができると証明したのです。
そして選ばれた人間たちは別の世界へと運ばれ、新たな地で生活を始めます。
今度は、人とモンスターの戦いが始まります。
魔王が倒れても、生き残った配下がまた復讐を繰り返す。
モンスターと人は共存できないのでしょうか」
ルビスは一息ついた。
「イザ、あなたならわかるはずです。この答えが」
魔物使いであったあなたなら、と添えた。
「俺は、モンスターの中にもいいやつはいると思っています。
人間の中にも最低なやつはいます。
それと同じ…モンスターとは言葉は通じないけど、心を通わせることができると思います」
「テリーはどうですか」
一瞬躊躇ったがテリーははっきりと述べた。
「デュランのように、魔であってもしっかりしたやつはいた。
あいつは魔物だったが、葛藤していたし、純粋な思いを背負っていた。
魔物の中にも権力争いがあった。魔物の中で強さを表す一つの指標が、人にいかに残酷になれるか、強くいられるかだった…」
「そうです」
ルビスはやんわりと微笑んだ。
「魔物も人も、本当は共存できるはずです。
人同士のように。
バーバラが孵す卵にはその役割を背負った者が眠っています。
新たな世界を作って、人と魔物が共存できる世界に育てるために」
「夢の世界では、スライムがチャンピオン目指して戦う闘技場があったね」
バーバラが言った。
「あたしはそういう世界見てみたいな、人と魔物が楽しく一緒にお酒が飲める世界が」
「…テリー、ミレーユ、あなたたちの親は夢の城にいます」
ルビスは立ち上がって、二人の手をとった。
「不安になることもありましょう。
しかし、あなたがたが歩んできた道より、それは不安なことではありません。
あなたがたにはかけがえの無いものがあります。
孤独に背負う必要はないのです」
あと、とルビスは言う。
「いやなことは、はっきりと、いやですと言うのですよ」
笑顔がとろけるように優しかった。
(つづく)
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