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妖精の鏡1

長かった冬が終わりを告げて春が来ると家の庭に花が沢山咲き、鳥や蝶が集まってきていた。
サラボナの人々も春が来ると商売だ商売だと言って賑やかになって、広場には人が集まったりしていた。
ある晩、満月で月明かりが綺麗な夜のことだった。
ふと外を見てみると、蝶のようだけどきらきらと光るものが花畑の上を飛んでいた。
なんだろうと思ってそっと音を立てないように階段を降り、庭に出てみた。

「あっ」

近づくとそれが蝶でないことがわかる。
半透明な羽をぱたぱたと羽ばたかせて飛んでいるのは小さい女の子…あれが妖精というものなんだろうか。
花びらをちょんと引っ張って花から引き抜くと、小さな頭に乗せて楽しそうにくるくると回っていた。

「あら、あなた…あたしがわかるの?」
「!」

なにか言いかけると、人差し指を唇に当てて妖精が近づいてきた。

「ちょいちょい、あなたの部屋行くわよ!」

オレンジ色の長い髪にはゆるやかにウェーブがかかっていて、白いワンピースを着ている。
小さな妖精はポピーと名乗って、私の枕に座った。

「やっぱり妖精さん?」
「そう、あたしは妖精よ。ただの妖精じゃない、恋専門の妖精なの」
「恋…?」

ふふ、と笑うポピーは小さいのに、雰囲気が宿屋の前でお客さんを呼び込んでいる大人のお姉さんに似ていた。

「そう、女の子や男の子をときめかせる恋のお手伝いをするのよ」

サラボナの広場の噴水には女神像が飾ってあるのだけれども、その前で好きな子に告白するとうまくいくといううわさは聞いた事があった。
だけどそれ位で、他に恋らしい恋の話を聞いたこともなかったし、私にとって恋というのは大人の世界の話だった。

「どんなお手伝いをしてるの…?」
「妖精の姿は大人には見えないから、いい雰囲気の二人を事故に見せかけて衝突させたりとか!」
「ええっそれでいいの?」
「あらっ、フローラちゃんは好きな人はいないの?」
「好きな人って…」
「んー!じゃあ身近な男の子!」

ふと頭に浮かんだのはアンディだったけれども、アンディとぶつかっても特に何も…と思った。

「ぜんぜんわからない」
「も~、どきっとしたことないの、7歳なのにっ」

ドキっとしたことならあった。昔、一緒に船に乗った子が…

「どきっとすることが恋なの?」
「そう、気になる、好きってことよっ」
「ああ…そうなんだ…!」

―――フローラの髪ってお空みたい。目は海みたいな色だよね。

言われた事を思い出して顔が赤くなってきた。
私はあの子が好きなんだ、そう思った瞬間、ポピーの興味津々な声が飛んできた。

「あらあらっ、フローラちゃんの初恋ってどんな人?おね~さんにもお話聞かせてよ!」
「え、えっと…」

そう、あれは数ヶ月前のこと…
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