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翌朝、夜明け前のライフコッドは意外と賑やかだった。
若者は寝るのが遅いが起きるのも遅い。
老人は寝るのが早く起きるのは早い。
畑に歩いていく白髪のおじいさんの姿を懐かしく見送って、イザたちは村長の家の裏、ライフコッド山の切り立った崖が見える場所に陣取った。
「東の空ってことは、お日さまが出る方向だね」
バーバラがわくわくしてたまらないといった顔で言う。
「なんだろ、なにが起こるのかなぁ」
「俺高いところ嫌なんだけど…」
ハッサンは自身のでかい図体を両手でぎゅうっと抱きしめた。
「あんなに高い屋根に上ってカンカン打てるのにダメなのか?」
「だってよぉ、屋根には足場があるじゃねえか。ここなんて柵もねえ!」
「山に柵なんて普通はついてないって」
イザは笑った。
と、その時、誰かが「あっち!」と指を指した。
言葉に出せない美しい紺色の空に、うっすらと光が見える。
日の出を背に、太陽の光が形になったような神々しい何かが、金色の光を撒きながらこちらを目指して飛んでくる。
「ウォオオオーン…!」
現れたのは太陽の光がそのまま鳥の形になったような大きな鳥だった。
鳥なのか、モンスターなのかわからない。
黄金の鳥は、ハッサンの身の丈の二倍はあろうかという大きな翼をはためかせながら、器用に崖に足をひっかけた。
一行の中で一番動物の扱いが上手い、動物担当のイザがおそるおそる近付くと、
鳥は先程の雄雄しさとは正反対に優しい声でクルルッと鳴き、首を下げた。
「乗っていい?」
黄金の毛に囲まれた宝石のような紅の瞳がぱちぱちとまばたきをする。
イザは鳥の背に飛び乗った。
バーバラが、チャモロが、ミレーユが、最後にハッサンが飛び乗ると、鳥はライフコッド山の上空を大きく旋回し、空高く、真上を目指して急上昇した。
空の色がどんどん薄くなり、徐々に寒さが増してくると、器用にも鳥は自分でマジックバリアとフバーハを張った。
「まぁ、なんて賢いの、この子は」
ミレーユのもらした感嘆の声に鳥は甘えるように返事をする。
真っ白な空間を飛び越え、真っ暗な空間を飛び越え、また空に舞い戻った。
今度はぐんぐんと真下に急降下していって、最後は雷のように大地を目指して舞い降りる。
背中に乗ったイザたちは鳥の毛を必死で掴んで、振り落とされないように必死だった。
どれくらいの時が経っただろうか。
まったく何もわからないまま、鳥に起こされ、降ろされる。
「…ここはどこだ?」
後ろには重い扉で厳重に封印された地下への入り口があるようだが、ハッサンとイザで引いてみても、チャモロたちが魔法をぶつけてみてもびくともしないので開けることをあきらめた。
周囲を見渡せば見渡す限りが砂漠、遠くには高い山が見える。
山が見えるのではない、砂漠は山に囲まれていた。
どの方向を見ても同じくらいの遠さの場所に山がある。
「見ろよ、あっちに町が見える」
ハッサンに促され、一行は歩き出した。
割と町は近かった。
白い古風な雰囲気の荘厳な神殿が建っており、町に入るにはその神殿を通るしかなさそうだ。
一行は神殿の通用門らしき扉についた鈴を鳴らした。
扉を開けた高齢の神官は口をあんぐりと開けた。
「おぬしら、どうやってこの中へ入った?」
「えっ」
イザは精霊さまの言う通り金色の鳥に連れられてここに来たことを話した。
嘘のなさそうな目だと言われるイザの目を見て、この神官も疑い深そうではあったが渋々納得したようである。
「ともかく、入るが良い。
ルビス様のおぼしめしとあってはそなたらをぞんざいに扱ってはバチが当たりそうじゃ」
「あの精霊さまはルビス様っていうんですか!」
「なに!そんなことも知らんのか!どこまで田舎者なんじゃ!」
この神官は規律にうるさいらしく、壁に貼ってあった地図を指し示した。
「ここが今わしとおぬしらが居るランシールの神殿、おぬしらがやってきたのは勇者の勇気を試すための場所、「地球のへそ」じゃ!
あそこに行くためにはこの神殿を通らなくてはならぬ、おぬしらの言うように、この神殿を通らずにあそこに入ることができるのは空から来た場合だけじゃ!」
「ランシール…?」
「あの地図、現実世界でも夢の世界でもない」
「見たことない地図です…」
神官は咳払いをした。
「ともかく、ルビス様はこの世界の守り神。
ルビス様に頼まれごとをされたとはどういうことじゃ。
正直に話せば協力してやらんでもないぞ、んー?」
「このおっさん、言い方がいやらしいな」
とハッサンは小声で言った。
「妖精が使ってたという、ラーの鏡というものを探しているんです」
「妖精、妖精…そうじゃな、まずは船に乗ってアリアハンに向かうとよかろう。
アリアハンはここじゃ。東に進んですぐ着く。
ここは世界に船を出す港じゃから、妖精の話を聞いたことがある人もおるじゃろう」
「アリアハンか…よし」
一行は神官に世界地図をもらって町を出た。
町を出る前に少々店を覗いたのだが、なにやら文字は全て鏡の塔やダーマの神殿にあったような古臭い文字で読むことができない。
陳列された武器防具は鉄仮面や身かわしの服のような定番アイテムだったが、道具屋には見たことのない怪しげな草が聖水の十五倍の値段で売っていた。
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