その翌日、一行はトンネルをくぐってサラボナ側に出た。
サラボナ側にはルラフェン側よりも強いモンスターがあふれていた。
先に出発したであろう商人たちも予想外の敵の多さにあきらめてトンネルを戻っていったくらいだった。
巨大な金色の象、鳥のようだが足がないキメラ、涎をたらした怪物ベロゴン、鎧を着込んで槍を振り回すランスアーミー…挙げ切れないほどサラボナ周辺のモンスターは手ごわかった。
「マヌーサ!」
フローラが御者台から魔法を唱えると、マーリンのベギラマとリュカのバギマがランスアーミーをなぎ倒した。
プックルの牙が魔物使いの首を捕らえ、スラリンのブーメランが空に舞う。
「いい連携だ」
リュカはそう仲間を褒め称えた。
と、そこに矢が飛んできて、リュカは体を地に転がした。
殺人ロボット…メタルハンターだ。
その後ろには爆弾岩とキメラも見える。
リュカの合図でスラリンのブーメラン、ピエールの剣、マーリンのメラミが火を噴くが、キメラのベホイミがメタルハンターを回復させてしまう。
「プックル、キメラだ!」
「ガルル!」
プックルがキメラを追おうと地を蹴ったそのとき、ブーメランが刺さった爆弾岩がゴロゴロとこちらへ転がってきた。
「あぶない!!」
そう叫んだのはリュカだったかフローラだったか。
爆弾岩の爆発はプックルとピエールを直撃し、そこよりわずかに後方にいたリュカとマーリンとスラリンにも大きくダメージを与えていた。
爆風が過ぎ去ってリュカが見たものは、立ち上がることが出来ないほど負傷した自分たちと、動かない前線のふたりの姿、そして…
「あ…」
リュカの前にはメタルハンターが立ちはだかっていた。
父の形見の剣で必死にメタルハンターの斬撃を反らすも、いつまでも反らせる自信はなかった。
「リュカァアアア!」
マーリンの悲痛な叫びが響くのと同時に、鈍い音がしてメタルハンターの剣が止まったのを知った。
リュカが目を開けると、目の前には何かを一生懸命両手で支えて剣を食い止めるフローラの姿があった。
「フローラさん…!」
「リュカさん、大丈夫ですか…っ!」
リュカはそのとき我が目を疑った。
フローラが両手で盾の代わりにしているものは、馬車の中においてきた天空の剣であった。
もちろん剣を抜いたわけではない。鞘の部分である。
しかし、リュカとマーリンはさらに目と耳を疑った。
「やああああああああっ!!!」
フローラのヴェールが強い風圧でふわりと吹き飛んだ。
彼女は…天空の剣の鞘から剣を抜き放ってメタルハンターを一撃で真っ二つに切り裂いた。
剣を慣れた手つきで構え、足を少し後ろに下げてから少し呼吸を整え、フローラとは思えないダッシュでキメラに向かって飛びかかり、羽を切り落としていた。
着地してリュカたちのほうを振り向いたフローラの髪は、彼女自身から発せられているらしい風に流されながら、太陽を浴びた葉のような緑色に輝いていた。
その瞳は太陽のように燃えて赤く、倒れたプックルたちを見つめる表情はフローラではなかった。
手には鞘から解き放たれた天空の剣が生き生きと煌いていた。
リュカが何かを言おうとすると、フローラらしき人物は空に手をかざした。
するとリュカたちの傷はたちまち癒え、倒れていたプックルとピエールの傷まですっかり癒えてしまっていた。
「フローラ…君はいったい」
リュカの呟きに答えることなく、彼女は糸が切れたように地に倒れてしまった。
慌てて抱き起こしにいくと、彼女は深い眠りに落ちているようであった。
髪の色は空色に戻っており、どの一本たりとも緑色ではなかった。
「いったい…なんだったんだ…夢…?」
しかし、リュカの目の前には真っ二つに切られたメタルライダーとキメラの姿、そして鞘に戻されることなく刀身を日に晒している天空の剣の姿があった…
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