部長との同棲が同僚にバレ、姉にバレ、慌しくいる間に求婚され…そして思いが通じたと思ったら社内公然の仲になってしまった。
「はぁ…」
そう呟きつつ一人にやけるのを抑えられない。
昔買ってもらったワンピースを着て挑んだ話し合い、山田さんにブーケ投げて怒られながら二人で帰った帰り道は手を引かれて、今ここにいるキミだけがオレを 動かしてるなんてあの部長に告白されて猛烈に照れたことを思い出すと、顔から湯気が出そうなほど頬が熱くなった。
そういう対象には見れないと言ったのに、やってやれないことはないとか素直じゃない言い方をして、仕舞いには
(…したいんだよオレが、だって…ぎゃああ!)
思わず手のひらを見つめる。
ゆっくりと手を握って、昨晩手をつないだ感触を思い出してまたぼーっとしてしまった。
思い出しては照れる。悶えてくねくねすることが止められない。
いいさ変に見られたって、雨宮蛍27歳いまこそ開花の時!
「雨宮?手が止まってるぞ」
「っ、す、すいませ」
本人を目の前にして思い出に浸ってしまった。
当の本人はスイッチが切り替わっているのか黙々と仕事を続けている。流石は部長。
すいませんと言いつつもまた、仕事に集中する姿をぽーっと見つめる。
こうしてるといい男なのに恋愛沙汰をジョーカー事とか言うし、素直じゃないし、行動したと思ったら早いしで…
ぱっと部長が顔を上げた。
「公私混同な話はしないほうが良かったか?」
「イヤ、大丈夫デス!」
どうみても大丈夫とは思われないだろう…。あの顔は面白がってる。
間違いない。でもそんな表情がいい。
「蛍」
「えっ」
「蛍、って呼んだんだよ」
にやにやと笑って言う部長に戸惑いつつ、「せ、誠一さん…?!」とぼやくと、部長はこらえきれなくなった笑い声を室内に響かせた。
「誠一さんはないだろ!アハハハハ!」 「イヤココハ部長ノ良キパートナートシテ深雪サンミタイニデスネ…」
笑ったままの崩れた顔で部長は小さく言った。
「いいんだよ、雨宮は雨宮だから」
その言葉にありがたみと幸せを感じて、何も考えられなかった。
勿論それから作業がまったく進まなかったのは言うまでもなかった。
(終)
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