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80話その後、部長視点で(後編)

「わーかった、わかったから…。今夜は一緒に寝るだけにするから」

なにをやっていたのかと言えば、顔を真っ赤にして照れすぎる雨宮を無理やり引きずり込むことも出来ずに、ベッドの脇で押し問答をしていた。
絶対に 15分は経っている。間違いない。

「じゃ、そ、そういうことでっ」

と、言ったまま二人で硬直する。
これは、どっちが先にベッドに上がるかという緊張というか遠慮というかそういう時間なのだろうか。妙に気まずい。

「…雨宮先にいいよ?」
「部長こそっ、どうぞどうぞ!」
「うーん…そこまであからさまに照れられるとやりにくい」
「照れ…って!!」

手嶋のときはどうだったの、という言葉を飲み込んだ。

「キミの寝てるところなんて沢山みてるんだし、ねぇ」
「ワタシだって部長が寝てるとこなんていっぱい見てますから!」

ベッドの端に足をかけ、奥に転がり込む。まだ立っている雨宮の手を引いて静かに座らせたが、正座をしたまま困ったような目が宙を泳いでいる。
仕方 なく同じようにベッドの上に座って、腕をつかんだ。

「キスも、嫌?」
「じゃないですけど…っ、いあ、アノデスネ、むぐ」

両手で頬を押さえてみた。

「まったく往生際が悪いなキミは…」

そういう自分も、減らず口を叩く割に顔はくだけてしまっていると思う。
自分の気持ちに素直になってしまうと、触れたくて仕方が無い。いままで近す ぎてこういう気持ちに気付くことがなかったけれども…

(先に落ちてたのは、オレのほうなのかも…)

そっと顔を寄せて、唇を軽く触れさせる。軽くつけては少し離し、強張った様子が少し和らいだのをみて、舌を忍ばせた。唇の割れ目に沿ってなぞると控えめに 唇が開く。
ゆっくりしようかと思っていたけれど、いざはじめてしまうと止められそうにない。遠慮がちに引っ込んだ舌を探してより深く、奥へと口付 けた。

「んっ…ぁは、ちょっとっ…」

いつまで真っ赤なのかは知らないが、慌てる雨宮は体裁を繕うように手の甲で口を拭い、空いた手でわずかに浮いたシャツを降ろした。
その手を取って こちらの口元に引き寄せる。

「部長っ…!」
「その格好で、いまさら何を繕う必要がある?いつもオレに見せてるのに」
「イヤ、だって、急にホラ…!あたし、戸惑いまくりデスヨ?!」
「見れば分かるよ」

うー、と涙目でこちらを見てきた。
されて嫌ではないのは見れば分かる、おそらくこの先のことも嫌ではないのだとおもうけれど、あんな大胆発言した 割に覚悟は出来ていないらしい。

「それに、オレもキミのそういう所含めてこういうことしたいと思ってるわけだし…」
「ぶっ、真顔で何を言うかと思えばッ」

反論してきてやっと同じ目線でこちらをまっすぐ見た。そのムードの無い様子に少し笑いをこぼし、雨宮の体を引き寄せる。

(真顔じゃないと…仕事モードじゃないと、言えるか、こんなこと…)

無抵抗にすとんとこちらの胸に倒れてくる雨宮を抱きしめてベッドに倒れこんだ。片手で毛布を引き寄せて、雨宮を腕の中に閉じ込める。

「今日から…朝は一緒に出勤しよう。もうずらす必要もないんだし」
「…そーですね」

照れくさいから、顔を見て歯の浮くような言葉は言えない。雨宮の髪に顔をうずめた。

「おやすみ」


(終)
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