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天使界に戻った日の座談会

世界樹のふもとで祈りながら眠りについたリーダーを横目に、三人は座り込んで丸くなった。どうやらこの世界にはなにかがあるらしいが自分たちには誰も見えないし、さっきから誰と会話をしているのやらこちらにはさっぱりだ、そういう顔で三人はため息をついた。

「なんかでかい事に関わっちゃったみてーだな」

金髪の調子よさそうな戦士があくびをした。

「ネレイズはのん気でいいわね。ナインは軽い気持ちでいたけど、あたしの言うとおり出発する前に長旅用の用意してきて良かったじゃない。食べ物もなく空の上、なんてことになるとこだったわ」

ネレイズの伸びたわき腹を槍の尻で小突いて、年増の女僧侶がぼやいた。手袋をはずし、革の袋の口を緩める。中から乾燥した肉を取り出して二人に手渡した。

「でも、レオノーラ、わたしこんなきれいなとこ見たことない」

さばきの杖に寄りかかった小柄な娘が空を見上げ、金色の列車を見下ろした。

「フィオは食事より空かしら」
「わたしはネレイズと違って燃費がいいの」
「食べなきゃ成長しないわよ」
「いいの」

レオノーラはマントをはずし、草に突っ伏して寝ているナインに静かにマントをかけた。ネレイズがムシャムシャと肉を食べる音だけが、天使界の屋上に響いていた。

「うちのリーダーがねえ、バカ正直でなかったら、こんなとこ見れなかったかもしれないけど」

リーダーをバカと言っておきながら微笑んで空を見上げるレオノーラに、ネレイズがぷっと吹き出す。

「そのバカの言った話を鵜呑みにしてついていくことにしたのはドコの誰だよ」
「意味の分からないこと言ってるとは思ったけど、嘘をついてるようには見えなかったのよ」
「僧侶さまさま、ってか?」
「あぁ、なんですって?」
「しっ!」

フィオが二人の顔の間に杖を突きつけた。

「何か聞こえる」

静かに耳を済ませると、風もないはずのこの屋上に涼しい風が吹きこんだ。ざわざわと大きな木…世界樹の葉が揺れてざわめき合う。三人は構えるのも忘れて呆然とその音を聞いた。

(青い…木…)

どこからともなく、小さい声が、掻き消えそうなほど小さな声が聞こえた気がした。

(果実を…集めるのです…)

それっきりなんの声もしなくなって、三人は顔を見合わせた。がさりと音のした方向をみると、ナインがいよいよ顔だけでなくひざを崩して全身草に突っ伏したところだった。

フィオは木を見上げた。

「てんしさま?それともかみさま…?」

レオノーラはわからないと短く言って、珍しく聖職者らしき祈りを捧げた。

「とにかく、おれたちはラッキーってことだよ、フィオ!」
「ラッキー?」
「そう、よくわかんねーけどうちのリーダーに付いてきゃ、これからも珍しいものが沢山見れるに違いない。そう思わねぇか?」
「この星空よりきれいなものがあるのかなぁ」
「おれは空より女だけどね…グアッ」

レオノーラに突き飛ばされて階段までゴロゴロと転がるネレイズを見て、フィオはくすくすと笑った。

「あしたがたのしみね」
「…その前にあんたも食事なさいね」
「…はい」

夜は更けてゆく。夢の中に落ちた天使と、いつまでも眠れない賑やかな人間たちと、静かにたたずむ木が一本。

物語は…まだ、始まったばかりなのだ。


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