私は船から身を乗り出して、親子がビスタの港に降りて歩いていく後姿を見つめていた。
船が動き出して、父が私を降ろそうとしても、二人の姿を見ていたかった。
ふと、リュカが振り返った。黒い目が私を見て、手を大きく振る。
「フローラ!またね!」
「リュカー…!」
手を振って…小さく小さく見えなくなるまで手を振り続けた。
やがて海と山しか見えなくなって、手を振ることをやめると、父が不思議そうに私を覗き込んだ。
「フローラや、どうかしたのかい。あの子が気になるのかね」
「お父さま、リュカってとっても面白い子なのよ。もっとお話したかった…」
「そうかそうか」
父は私の手を握った。
「きっとまたいつか会える。サンタローズに家があるそうだから、期を見てまた手紙を書こう」
「はい、お父さま」
また会える、そう楽しみにして、彼と話したことを思い出しながら一人、部屋で椅子に座ってぼんやりと窓の外を見ていた。
「空の髪に、海の目…」
リュカが例えた私の見た目のことだ。
だけど、自分の色よりリュカの目の色のほうが素敵だと思う。
黒なのに黒じゃない、沢山の色と光が集まって黒に見えるような、そんなきらめきのある色。
「また会いたいな…」
空は雲ひとつなく、太陽の光で海もきらきらとしていた。
私の目の色、リュカと会える場所。そう考えたら海のことが少し好きになった…
「…なんてロマンチック!6歳児がそんな口説き文句言うなんて、お姉さん涙が出ちゃう!」
ポピーがハンカチを取り出して目元を押さえた。
(そんなに…泣くほどのことなのかしら)
「その子、いつ会えるかわからないんでしょ?」
「うん」
「フローラちゃんは会いたいんでしょ?」
「会えるなら会いたいけど…」
「よし、お姉さんに任せなさい」
どこからか袋を取り出したポピーは、伸びをしてから勢い良く飛び上がって近くにあった鏡に粉を振りかけた。
きらきらと輝く粉はゆっくりと鏡に吸い込まれていく。
「なにしたの?」
「お楽しみ♪いい夢みてねフローラちゃん」
ばいばいと手を振って去ったポピーだが、花びらを置き忘れていったようだった。
枕元に残された黄色い一枚の花びらが、妖精がそこにいたことの唯一の証拠になった。
「おやすみポピー…」
窓を閉めて、粉が降りかかった鏡の方を向いて、私は布団を被った。
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