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時の果て

The Worldのあの事件が過ぎ去って・・・3年。
カイトには大学受験が迫り、ゲームをプレイすることが難しくなっていた。


大学の講義中。一人の青年が鞄の中の携帯を取り出した。
メール着信を告げる短いバイブの音がかすかに聞こえる。
幸い、教師から見えない位置だったから、彼は遠慮なく画面を確認した。
送信者はカイト。パソコンメールを見ることが難しい事から、最近は携帯メールが中心である。
"今日、久しぶりにTheWorldができるんだ。良かったら付き合ってくれないかな?"
彼は微笑みながら返信を打った。
"もちろんだ、まかせろ。Λカルミナ・ガデリカで待っている。"
カルミナ・ガデリカは通りが分かりやすく、迷わない。それが一番の利点だ。
最近待ち合わせにはそこかマク・アヌしか使っていないのが現状だが、
Θドゥナ・ロリヤックやΣフォートアウフ、Ωリア・ファイルでは広すぎて見失ってしまう。
彼らは有名人だけに、Δでは命取り・・・であることも今回の待ち合わせ場所に関係している。

横から知人が声をかけてきた。
「彼女からメールか?」
「違う!・・・彼女なんていない」
へぇ・・・と意味ありげに笑った知人に彼は言った。
こいつは容姿端麗・天才肌だからモテるのに、彼女がいないわけ無い。さては、隠してるな?
「おい、誤解してくれるなよ!」
その後知人は苦笑し続けていたが、彼は気にとめなかった。
―――結局、その表情からすると・・・彼女なんじゃないかなぁ?



Λカルミナ・ガデリカ。
暗闇の中、白いシルエットがカオスゲートに出現した。
レアアイテムの入った袋を左手に、鋭く光る高LVの片手剣を右手に持った剣士。
白い羽根付きの、世界に1つしかない限定PC・バルムンクだ。
すぐさま小走りで路地を曲がって武器屋に駆け込むと、いらないレアアイテムを売りさばいた。
その時、不意に後ろから声がかけられた。
「バルムンクじゃないか。」
老人にもみえるガリガリの呪紋使い・ワイズマンだ。.hackersのメンバーの1人でもある。
「今日はカイトとでも待ち合わせか。そもそも、君がΛなんかにいる理由なんてそれ位だろう?」
「読むな、お前は・・・・・・。」
「まぁ、私はこれからヘルバと情報収集なので失礼するよ。カイトによろしく言っておいてくれ。」
彼は不気味に笑ってその場を去った。バルムンクは静かに、その3年前と変わらぬ後ろ姿を見送った。

そののち、しばらく経って。
ブン・・・という慣れすぎた音と共に、待ちわびていた者が現れた。目立つイリーガルな色のPC・カイトが。
「ごめん、待った?」
「いや、全然待ってなんてないぞ。」
よかったー、とカイトは喜んだ。しかし、実の所彼は1時間前から待っていたのだ。
このやりとりが恋人同士の待ち合わせのようで、なんとも微笑ましい。
「じゃあ、今日はぼくのLV上げにでも付き合ってもらおうかな。Ωサーバー行っていい?」
バルムンクは軽く頷いた。

「最近皆に会えなくて寂しいんだよね・・・。早く受験終わらないかなぁ。」
木属性エリアをぶらぶらと二人で歩きながら会話する。カイトはちょっと寂しそうな顔をした。
「バルムンクとは1年前とか、毎日のように一緒に居たから・・・毎日会わないと違和感あるんだよね。」
彼の言葉にバルムンクが心に秘めていた話を唐突に切り出す。
「カイト・・・俺の事、どう思ってるんだ?」
バルムンクの唐突な問いに、カイトは目を丸くした。そして彼は下を向いて困ったようにつぶやいた。
「ど・・・どうって!オルカには悪いけど、バルムンクが一番のパートナーだよ。頼れるし・・・その・・・うん・・・」
「俺はお前の事がずっと好きだった。そして、今も。これは世の中ではあってはいけない事かもしれない。
でも俺はお前と離れていたくない・・・一緒に居させてくれ、カイト。俺の側に居てくれ。」
―――!!
カイトは一瞬驚いたような顔をしたが、目をつぶってにっこりと笑った。
自分も同じ気持ちです・・・と言いたげに。
「良かった・・・バルムンクもそう思ってくれてたんだ!ずっと、自分が可笑しいんじゃないかなって思ってた。」
だって、ブラックローズや寺島さんを始めとした女性達が居るのに、自分は何も思わなかったから。
確かにきみは頼れるお姉さんだった、でも、それは恋愛感情じゃなかったんだ。ごめんね、ブラックローズ。
バルムンクと会った時、始めは敵同士だったけど、なんてカッコいい人なんだろう・・・と思ってた。
仲間になって分かった、几帳面で親切で、良い人だって。ふと気付いたら彼とずっとパーティーを組んでいた。
「ぼくも、バルムンクと一緒にいたい。ぼくを置いて・・・どこにも行かないでね。」

始まりには挨拶を。
そして約束を。

「ああ、どこにも行かないさ。ずっと、カイトの側に居る。」
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