忍者ブログ

天球ギャラリー

小説、イラストの保存庫です。
MENU
このサイトは次のURLに移転しました。
http://ten.zemlyan.com/
新URLへ移動します。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

TrueEnd

TrueEnd







(2005/Photoshop)



L月同人「TrueEnd」の表紙です。

追記2010:やっぱりしっかり描いたニアとメロは今でも怖くないっす!!



原稿の一部が残ってたので載せてみる。



たしか、キラにLが勝って、ピュアなライトが残ったらっていう話だった。


PR

L

L







(2005/Photoshop)



なにがショックってLの死亡でしょう。

THE ENPRESS

煌めく情熱と、お人よしな性格と…若さだけがそうさせるのではない。

城之内の性格は歳をとろうと変わらないだろう。

冷めた孤独な自分になにか大事なものを思い出させてくれた大事な人が城之内なのだと認識するに、そう長い時間はかからなかった。

ただ、大分年下な人間に興味を持つなんて思いもしなかっただけだ。

自分は年上のダンディでびしっとした男と肩を並べるのかもと思い込んでいたのだから。

年下なんて、ガキなだけ。

そう思っていたのに、生意気なガキに惚れた自分がいる。

世の中は奇天烈で、予想外なことが沢山あるんだなと思ったのはこれが1番大きかった。

彼は私の目と心を捕らえて放さない。

予想外な面白いことを言っては笑わせてくれるのがいつも嬉しくて期待してるなんて言えない。



「みえないけどみえるもの、なーんだ!」

城之内がそう言うので、不思議に思った舞は聞き返した。

「え…逆じゃなくて?」

「そう、逆じゃなくて」

逆なら自分たちが出会った頃にあった会話のひとつだが、一体なんなんだろう。
見えないってことは目をつぶっていてわかるということだろうか?

「勿体振らないで言いなさいよ」

「ふっふっふ、それはな」

こんな会話をしていられるのも、この世にはいない遊戯…ファラオのおかげである。

自分がペガサスの王国で遊戯を狙い、目をつけたことから始まった。

遊戯は城之内同様、自分に大切なことを思い出させた。

気高きファラオがいなければ自分は一介のデュエリストに終わり、決勝に進むことなどできなかっただろうに。

城之内の顔がにやっと砕けた。

「愛だ!」

かあっと自分の頬が赤くなるのを感じた。

とっさに手で頬をおさえる。

「な、なによそれ」

「普段は目に見えなくて溶け込んでるのに、考え事をすると舞のことが過ぎっちまう」
同意したかったが恥が勝って頷けなかった。

「目に見えるものには舞が強いのに、目に見えないものになると途端に可愛くなっちまうんだもんな、舞は」

「ちょっと…!か、からかうのやめなさいよ…」

城之内の目が優しくなる。
「舞とはいろいろあったよなぁ」
初対面で色気と外見に騙されたあいつは、男らしくさっぱり豪快な態度を見せたらババア呼ばわりするし。
共通の嫌な奴を倒してから仲間ごっこを一晩。

それから城で参加券を盗まれた城之内にカードをわたして…。

賑やかな声に見上げれば、空には不機嫌そうな海馬瀬人となだめる弟、ぎゅうぎゅうにヘリに乗った¨仲間たち¨をみつけたあの時から、変われた自分を認識したのかもしれなかった…。

「ねえ、城之内」

舞は城之内に優しく話しかけた。

「あたしたちは、幸せでいいんだよね?」

なにが幸せじゃいけないのか自分でもわからなかったが、不安だったのだからしょうがない。

「幸せでいけないわけ、ないだろ?」

「そうよねー」

二人でこうしてくだらない話をして、励ましあって、笑いあっているのが幸せなんだ。

お互いさらけ出して、お互いのすべてを愛し合ってることって幸せなんだ。





「…ノロケは社外でやれよな~」



「うぎゃああああ!」



モクバが呆れた目で見上げていた。

「オレが入ってきたのにも気付かないでノロケてるおまえらなんて兄サマには見せられないぜ…」

「そんなことは…」

「だって兄サマ、遊戯が冥界に帰ってからどうしてると思う?」

舞は思った。

海馬瀬人は他人に興味を抱かないが、例外が遊戯だったのだ。

詳しく知らないのでわからないが、突然城之内に会えなくなった自分のようなものと考えたら事態は深刻だった。

「オレがでてきてよかったぜ。

兄サマが来たらおまえら、リアルに殺されかねないぞ?」

やはり、事態は深刻なようだ。

「え、兄サマが心境を語る相手なんているわけないだろ…。

遊戯がいれば、遊戯が1番兄サマの考えてることに詳しかったんだけどな」

「海馬が遊戯のことばかり考えてるってなんでわかるんだ?」

「だってよ、遊戯から預かった鎖を身から離さないんだ。

風呂も、寝るときもだぞ。当然起きてるときも。

これだけで十分すぎるぜ…」

鎖というのは千年パズルのついていた鎖のことである。

彼のデッキはあちらの遊戯が預かっているが、遊戯も気をきかせたのだろう。

話を聞いたところ、遊戯の次に王の座を継いだのは海馬の前世であり、記憶の世界ではパズルと紐ごと手渡されたらしかった。

いまやパズルはない。

それでも鎖を首にかけて、見えないパズルの存在を信じるかのように不在の彼との絆を確かめているのだろうか?

「海馬がそんな状態だなんて想像もできねえ」

「オレだって初めてだよこんな兄サマ…」

円環

昼は太陽に照らされて輝く黄金色の砂漠が見える。夜は月に照らされて輝く白銀色の砂漠が見える。

砂漠の砂はその手から滑り落ち、何もこの手には残らない。

ただ、この手には何も残らなくとも、彼らは自分を覚えていてくれるという事実さえあれば、どんな苦しいことも乗り越えられよう。

『時は円環のように繋がっていると思いませんか、ファラオ』
懐かしい言葉を思い返して、噛み締めるように小さくその言葉を暗唱する。
『肉体が死んだら来世に蘇るのです。記憶はないかもしれませんが。ファラオはいつでも輝いておられるから、知らぬ間に私を側に引き付けなさるに違いない』
そしてこの言葉を彼は自信満々に語っていた。
『まあ、この私がアテムの魂を見失う訳がない。何度生まれ変わっても本能的に探し求めなければおかしい』

おかしい、とまで言い切ったあの男のことだ。 未来でもあの男がサポートしてくれるのだとすれば自分にはなんの心配も要らない。

自分は単に自己犠牲したのではなく、あの場を救う光を求めに未来へ旅立つ。

いまこの最後の瞬間…。記憶を失う前のこの瞬間に願うならば…。

千年錐よ、願わくばセトに光あらんことを。

父は戦場で死んだとされ、家族というものを持たなかった彼の来世には光を…


…おかえりなさいませファラオ。

記憶の戦いが終結し、帰還したアテムを迎えたのはセト、シモン、アイシスであった。 やはりあの戦いで命を落とした彼らは存在しないのだ。 シャダ、カリム、アクナディン…。

「帰って、きたのか」
アテムは振り返った。ブラックマジシャンに憑衣したマハードが大きく頷く。 セトはアテムに歩み寄り、手に携えた千年パズルをアテムに差し出した。
「お待ちしておりました。…私に再びファラオと呼ばせて頂けませぬか」
セトの青い双眸が瞬き一つせずにアテムを見つめた。
「だがエジプトはおまえが成長させてきた。セトが王のほうが…」
「いいえ。私は幼い日、あなたと共にあり全てを捧げようと誓ったのです」
「いや、オレには何一つ国のことは出来やしない…」
シモンがアテムの手を取る。
「ファラオにはファラオの、セトにはセトの得意分野がありますぞ。共同統治なさればよい」
目を見開いたアテムにセトが微笑んだ。

「ファラオは民に身を尽くされる傾向がありますから…。私は民以前に、あなたに身を尽くすことで頭も手も一杯ゆえ」
「セト…!」
「闇はあなたをしりぞけて私を王にと望みました。 しかし私には王になるより、あなたへ尽くすことのほうに興味がある。 あなた無しの世界など、私の思うままになりすぎてつまらないものでしたから」
ククク…と口端を上げたセトを見てアイシスが笑った。 シモンもやれやれとため息をつき、マハードは「セトらしいな」と呟いた。

「わかった。オレは再びファラオとなろう」
千年パズルを我が身に引き寄せて、
「オレが帰ってきたからにはセトを退屈させやしないぜ」
とアテムが笑えば、セトは望む所だとばかりに不敵な笑顔を見せた。

神官達から離れた柱の影にちらりと空色の髪が見えた。 色素の薄い肌に、海のような鮮やかな碧色の瞳を宝石のように輝かせている精霊と視線が交わった。 マハードと同じように、強い魔力を持った者にしか見えない魂である。
―――どうかセト様をよろしくお願い致します、ファラオ…
アテムが頷き返すと、精霊は頭を下げ、竜の姿に変わって大空へと舞った。 竜の後姿を見送って、アテムはセトを見た。
マハードと同じくあの精霊も三千年の間セトの魂を守り続けているのだろう。 初めて海馬瀬人という人物に会ったとき、あれがセトの生まれ変わりとは気付きもしなかった。
それもそうだ、闇のゲームの中でキサラであるはずのブルーアイズホワイトドラゴンは彼に従うことがなかった。
当時記憶のなかった自分や、本来の魂の力を失っていた海馬の目には見えなかっただろうが、キサラは側で泣いていたかもしれない。
カードをポケットから出したり、人から無理矢理盗んだりする行動を悲しんでいただろう。

だがそののち彼は本来の魂を取り戻した。
(おまえは三千年経ってもちっとも変わっちゃいなかったな)
しいていえば違うのは、人前でファラオと呼び敬語を使うモードがないことだけだろう。 二人だけのとき、自分に対するものはまったく同じ。
(最初のころはモクバに『兄さまが狂った』なんて言われてたっけな)

マハードの苦労も、キサラの苦悩も今ここに報われたのだ。 アテムの魂は戻り、そしてまた生まれ変わってセトと出会う。 この輪廻は止まらず、二人を見守る精霊たちもまた何度も主を守ろうと戦う。
「セト、オレたちはいつまでも共にあるぜ」
アテムの手がセトの頭巾を外した。
不思議そうに見下ろす碧い目、亜麻色の髪、なにひとつ来世の彼と変わらない。
「勿論です」
ふと、セトが耳元で囁いた。
「永遠に私のものだ」
アテムは頬を染めつつ、彼を振り返る。
「さあ民が待ってるぜ、オレたちを!」

神官たちとファラオは歩き出した。 その後ろに竜が控え、途中の廊下からマハードの弟子が加わる。
兵士たちの驚嘆の声を一身に受けながら、千年パズルとセトの頭巾を手にした小さな王はバルコニーに足を踏み入れた…

passional stair

その美しい顔に、飾られる表情は嘘だと分かっていて。
本当の心を見抜くのは無理だとわかっていても、見抜きたくて。
ただ、心の底から、きみに微笑ってほしいという想いだけがある。
年の最後に、自分のために。

あの子がそう想っているのを知っていて。
毎回毎回わざと遅れてみせる自分っておせっかいだなと思った。
ただ、それでもあいつを陥れてみたいという好奇心、遊び心は尽きなかったのだ。
自分はなんてお世話焼きなんだろう。

信じてはならないと知っていても、受け入れなくては可哀想だと思っても。
どうしても駄目だった、心の底を表現するのは難しかった過去。
縛られて、親の言う事を聞いて、逆らわずに、素直に生きることが出来なかった自分が。
ありがとう、とも、よろしくとも、本気で言えるのは―――


『Passional Stair』 パッショナル・ステア


ネオンの光る街角の大きな塾の中。
肌が白く顔の整った脚の長い高校生が、コートを羽織りながら鞄の中の携帯に目をやった。

ひとつ、メールの届いた音がなったのだ。
このまえの休み時間にメールを送った時、いつ届いても分かるようにと着信音を有りにしておいたのを今ごろになって思い出した。
携帯のメールアドレスを知っているものは少ない。パソコンのアドレスは有名だから、常にラブレターやファンメールが届いてしまう。
用心して、携帯のアドレスを教えたものはリストにする必要があるくらいだ。

彼は高い身を折って床の鞄に細い腕を伸ばす。
コートを羽織り掛けで携帯を取り出すその姿はいつもと変わらぬ姿の筈なのに、どこか優美でかっこよく、下に目をやっていて気付かない間に彼を凝視するもの が増えていった。
だが、慣れている彼にとって、そんなことは気にすべき事ではない。

届いたメールは、今一番信頼できる者からだった。
あの「第二次冥王の口付け」とも呼ばれた大規模なネットワーク・クライシスを解決に導いた仲間達のリーダー、PC名はカイト。
本名は知っているが―――あえて別に考える事にしている。
今から随分前に手を組んで、数々の痛々しい事件を乗り越え、根本となる最終体をおさえるに至った。
その最後の刻に立ち会った個性豊かな大勢の仲間と、最後まで一緒に戦ったカイト、その相棒で勝気な女・ブラックローズ――意識不明者のひとり速水文和の 姉・速見晶良――達とは、今でも連絡を取り合い、エリア探索を頻繁に行っている。
以前のような異常は見られないが、正常に形成される世界を観るのも悪くない。前ほどのスリルは感じられないけれど。

メールの内容は、正月限定に作られた一日限りのエリアを回らないか、という勧誘。
たしか、クリスマスのやつも一緒に回ったような気がする。
アレは本当に真っ白な猛吹雪――今はもうないザワン・シンというイベント以来の幻の天候――のエリアだった。
いたるところに立体感溢れるクリスマス・ツリーが飾られていた・・・いや、にょきにょきと生えていてと表したほうが正しいか。
システム管理者がサンタの格好をして歩いていたのを目撃した時は、それがゲームだということも忘れて、げほげほと咳込んでしまったものだ。
話は戻るが、正月限定のエリアなんて都合の良いものを作ったものだ。
そう、思った。

それが探索エリアらしいエリアじゃなかったから、余計に驚いた。

ネタバレは数日前からされていた。
誰が漏らしたかも知らないけれども、結構有名な噂になっていたものだから、古株のプレイヤーである自分には手に入りやすい情報だったのだけれども、古い、 平安風の屋敷がエリアになっているらしい。

モンスターも古代和風だとか。
そのような、建物があってモンスターもいるエリアなんて、今まで数年間続けてきて、存在しないことがわかっていた。
それをあえて作るとは、サイバーコネクト社も考えたものだ。

これで人々の妄想――想像の世界にとどまらない、プレイヤーの望みが一つ叶えられたのかな?
彼がメールを見ながら思考にふけっていたとき彼を凝視していた人々は、そのメールが彼の恋人から来たのではないかと試行錯誤していた。
それは違ったが、それとは別の意味では合っていることになるのかもしれない。

彼はコートを翻し、授業の終わった教室を飛び出した。
暖かな年末、しかも31日、約束の時間に間に合わせる為、ひたすら走り、跳び、走り、跳び、自宅へ急いだ。






バタン。

家に着いた時、約束の時間まで数分だった。慌ててログインしてカイトに会いに向かう。
待ち合わせ場所は、限定エリアの告知がされる、Δサーバーのルートタウン、マク・アヌ。
彼は何の表情もつけずに(単に、表情のショートカットを押すのを忘れていただけである)カイトの元に急ぐ。

カイトは苦笑しながら言った。
「バルムンク・・・、まだ学生服のまんまでしょ」
「・・・なんで分かったんだ?」
カイトは呆れたような声で言った。
「だって、バルがこんなに大急ぎで走ってくるなんて滅多に無いもん」

そういえば、いつも余裕のある時間にゆうゆうと歩いてくるのがスタイルだった事を思い出した。
今日は年末なのになんで塾があるんだか、という怒りで一杯だったし、時間に間に合わないと生きてゆけないような気がして、大急ぎで走ってきたのだ。

「まだブラックローズは来てないよ、よかったね」

よかったね、といわれれば嬉しいような気もするが、大して嬉しくない。
遅刻魔のあの娘と比べられたら自分も終わりというものである。ため息をひとつついて、カイトに向き直る。

「ブラックローズに抜かされるようでは俺も落ちたものだ・・・」
「あはは・・・バルはきっちりしてるもんね。寝坊とかしないでしょ」
「したら生きてけないぞ、高校までは1時間強程度かかるんだから」
「こっちはその分、楽だなー」
カイトは笑いながらつぶやいた。
「走ればすぐついちゃうしね」
カイトの綺麗な翠の髪がいつまでも暮れぬマク・アヌの夕日に照らされてきらりと輝いた。
身につけた双剣が鋭い光を返し、カイトの幼げな顔を映す。

「神経質になって生きるのは大変なことだな、と最近気付いた。
昔は時刻表を見て歩いていたくらいなのに、今は目の前で電車が行っても気にしなくなった」

ようするに面倒になったのかもしれない、とつぶやいてみると、カイトは楽しそうに微笑った。
「バルは微笑んだほうがかっこいいよ。せめてショートカットだけでいいから笑おう?」
「笑ったら、笑顔の価値が下がるかな?」
「下がらない下がらない。人気はもっと上昇するに違いないって」
「もうファンはいらない・・・」

「こないだ現実世界の写真送ってもらったけど、リアルでもバルは二枚目だね。背が高くって細身で、頭脳明晰、顔立ちは整ってて睫は長くって。黒髪でもかっ こよさがにじみ出てるよね。毎日何通のラブレター受け取ってるの?」
「痛いところを聞いてくるなよ、カイト・・・」
明らかにカイトは楽しんでいる。面白がっている。
「だって、ぼくはそんな経験ないし」

と、そんな事を言っているが、カイトの親友で自分の相棒――カイトといる時間の方が多いせいで既に元相棒のような気がしてならないが――オルカが話した 実状によれば、登校する前帰宅する前、体育に出る前に、カイトの熱烈なファンクラブの会員達が手紙回収作業を欠かさないとか。
男女双方に愛されてしまうらしいカイトは、過保護なファンクラブのおかげで自分の人気を知らないのである。
確かに、The Worldというネット上の姿も写真で見たリアルでの本当の姿のどちらも可愛らしく、ファンのひとりやふたりは居そうだなと思ってはいたのだが、カイト自 身こそ知らないが、学校中の五人に一人は知っているくらい大きな組織なのだそうだ。

「カイトは年末を過ごすのはどうするんだ?」
「えっ」
話し込んでしまって気付かなかったが、あと数分で訪れる、カウントダウン。
そのおめでたい瞬間を、どうするのだろうか。テレビを見て?いや、親と笑いながら?

「このまんま・・・・・・・・・のつもり」
表情には変化がなかったものの、少し語調が不自然だったのが気になった。
「家出でもしたのか?それとも閉じこもってたりするのか?」

「なんでもなく普通なんだけど、年越しをバルムンクと過ごしてみたいなぁと思った」

クリスマス――あのときもブラックローズは遅刻した――も同じ事言ってたじゃないか、と言ってみると、カイトはけらけらと笑う。
「だって、人の良いお兄さんと笑って過ごせる年末年始っていいじゃないか」
「俺が、人の良い?」
「良いよ。すごく」
素直に納得できずに考え込んでしまった。
不器用だとか、無表情だとか、もっと笑えだの、もっと愛想良くしろだの言われた事はあっても、人がいいなんて言われたことなかった。
「・・・悪いが、カイトのセンスを疑うぞ」
「酷いなぁ、誉めてるのに」
カイトは、あっ、と声をあげた。

「バル、カウントダウンだ!」



マク・アヌにいるユーザーはとても多かった。
そのため、イベントのひとつとして、サイバーコネクト社のマスコット・キャラクターによるカウントダウンが行われるのが定例になっている。
いままで居た橋の上から、駆けてゆくカイトの後を追って広場にいく。
広場では、大勢の人がトークを、大勢に聞こえるチャット・モードに替えて、カウントダウンをしていた。
物好きもいたもので、今年のカウントは100かららしい。
着いた時、22、21・・・という声が大きく響いていた。

「ほら、カウントしよう!」
カイトに腕をひっぱられ、一緒になって叫ぶことにする。


5、4、3、2、1―――――




新しい年が来た!




あまり意識はなかったが、カイトが無性に嬉しそうなので、一緒になって喜んでみる。
カイトはその表情こそ普通の笑みだったが、心の底から喜んでいるように思えた。
「ありがとう、バルムンク!」
蒼い双瞳がこちらをみつめて、にっこりと。黒い手袋をした自分の手を、しっかりと両手で握って。

「去年は大変お世話になってなって、沢山迷惑かけたけど、今年もかけていい?」
――――――・・・・・・だから、これからもよろしくね!
そこにある気持ちを少しでも理解できたような気がしてきたら、無意識のうちに口が開いてしまっていた。

「勿論、どんどんかけてこいっ!遠慮はいらないからな!」

カイトにつられて、今度はましに微笑えたかもしれない―――――。
ただ、知らず知らずのうちに演じていたキャラから外れて、リアルのまんまの声と言葉で返してしまったことにも気付かずに。



美しい彩りのマク・アヌで、少し視点を切り替えると、ゲート付近にいるブラックローズの姿が見えた。
ずっとそこにいたかのような彼女はこちらを見て腕組みをし、微笑んでいるように見えた。
カイトは気付いていない。
どうやら自分を探して視線をよこしていたらしい彼女と目が合って、ましに微笑ってみせると、彼女は安心したのか、メールを送ってきた。

――――――良いお正月を迎えられたかな?

どこも気取った感じのないその文面に微笑んで、目をマク・アヌに戻すと、カイトは手を握ったまま、首を橋のほうに反らした。
先取りしてしまって現れる人物が誰だか分かっているけれど、嘘をついておこう。
・・・お礼の意味も兼ねて。

「遅いぞ!」



―――そこに、ブラックローズが駆けてくるのが見える。



× CLOSE

What's New

メニューはBlog上部にあります。
★ Readme>当サイトについて をご一読の上、自己責任でご閲覧ください★

HIT >>次480000

最終更新: 移転しました。(07/30)

管理人:古川晃
 

拍手・コメントなどお気軽にどうぞ

アンケート

Quickvoter

Q.第2回更新してほしいジャンル投票

主ミレ(DQ6)
主フロ(DQ5)
DQ9
海闇(遊戯王)
マテリアルパズル
その他
※作品傾向:エロ

ブログ内検索

management

アクセス解析

× CLOSE

Copyright © 天球ギャラリー : All rights reserved

TemplateDesign by KARMA7

忍者ブログ [PR]