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天球ギャラリー

小説、イラストの保存庫です。
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激怒する鳥語文法の叙情詩人

「わぁい、レアだぁあ~(^^)」
ミストラルの嬉しそうな声が響き渡った。
このエリアでは、なんだか金運が良いらしく、結構レアなものが出てくる。
「ぼくのドレインゲージがやばいけどね・・・ははは・・・」

やはり、レアと同時にカイトも危ないのだが。

「次で最後だ。」
妖精のオーブを使い、モンスター完全撃破を目指してきたカイトたちは、最後の部屋に入った。
「出たぞっ!構えろ!」バルムンクは吠えた。「たぁああーッ!!」

彼は青く細身な片手剣を構えて、飛翔する。
そのまま大きく振りかぶって、魔法陣が開いたと同時にモンスターに斬りかかった!
「ウィルスバグだよ~!」ミストラルは呪紋の詠唱に入る。そして、大きく杖をかかげる。「ファライクルズ!!」
大きな攻撃のエフェクトが現れる中、カイトが右腕を突き出す。
「データドレイン!」

イレギュラーな緑の数字の羅列が走り、彼ら以外誰もいない広い空間にノイズ音が響き渡った。
大きな閃光に包まれたかと思ったら、目の前には正常なモンスターの死骸と、着地したバルムンクの歩み寄る姿があった。

「どうだ?」
彼が言う、どうだ、というのは、ドレインで手に入れたアイテムのことだろう。
「金運がいいみたい(笑)」
嬉しそうに笑いながらカイトはそれをバルムンクに渡した。



遠くから、その光景を見つめている人物がいた。
「くそ、バルムンクの野郎・・・」マーローは、悔しそうに歯軋りをした。「カイトからアイテムもらいやがって!」
マーローと一緒に(カイトの後をつけて)来ていたエルクも、淡々と言った。
「PKしちゃいたいね」
残りの一人であるブラックローズは、「なんでこいつらと来たんだろう」と、少し後悔していた。

「あたしはただ、カイト達どうしてるかなぁって、思ったから来ただけなんだけど」
「ブラックローズは自分がヒロインじゃなくっていいの?」
エルクが鋭く言い放つ。
「あたしをバルムンクPKの仲間に入れようとでもしてるわけ?」
「さあな」

マーローはカイトにメールを送った。
目の前にいるカイトにメールを送るというのも、なんだかストーカーっぽくてまずい気もするが(実際ストーカーなのだが)
とりあえず、一緒にエリアへ行かないか、という内容を送ってみる。



「あれ?」
カイトはマーローから来たメールに目を通す。
その姿を、マーローは真剣に見つめていた。はい、または、うん、とでも言ってくれ!という期待を込めて・・・。

だが。

「マーローから、エリア一緒に行かないかって。」
「でも今日はミストラルが楽しみにしていたイベントの日だろう?」
「わぁあ~覚えてくれてたんだぁ(>▽<=☆」
「うん、じゃあ、マーローには、またね、って送るよ」



・・・・・・・・・・・・(^~^=☆



「カイトォオオオオー!」
マーローは悲痛そうに叫んだ。
パーティーモードであるがゆえに前の彼らには聞こえず、2人の耳に痛いほど聞こえてくる。
「男なんだから泣くのはやめなさいよっ!うるさいわねっ」
「マーローなんかを男の代表みたいに思わないで欲しいんだけど。。」
二人に散々文句を言われ、マーローは嫌そうに睨んだ。
「でも、今日イベントなんでしょ、お月見イベント。」

そう、今日こそがマク・アヌが巨大な月見会場になる日なのだ。
今日なら、バルムンクがオチた後に夜遊び風にカイトと遊ぶのもできる・・・

「こら!なに考えてんのよ!」
「声にでてたよ、マーロー。みっともない・・・」
「んなっ」





という訳で夜になった。

「あたしたち、ストーカーみたいじゃないのよ」
「現にストーキングしてるしな」
「アンタのせいでしょーがっ!」

エルクはひとり、落ち着いて目の前のパーティーを眺めていた。
マク・アヌの9月限定イベント『お月見』だ。

「今日のサポートHPに載ってた『本日の占い』によれば・・・」
保存しておいたファイルを開いて、エルクは音読した。
「バルムンクの運勢は『危険な夜遊びへのお誘い。最悪の場合犯罪者に?!』だけど・・・。どういう意味なんだろう」
「ならそれを実現してやるぜ!」と、マーロー。

ひとりでずかずか歩いていって、バルムンクにつっかかる!
「てめぇ、カイトをひとりじめしやがっ・・・・・・」

ズバシュッ!!

「すまんな」
マーローは煉瓦の床にどさりと倒れた。それを満足げに見たバルムンクは、微笑みながら青い細剣を鞘に収めた。
「今夜はお姫様のエスコートゆえに、手加減しないつもりなんでね」
「お姫様って僕のことなの・・・?」
「当然だろう、カイト☆」

いちゃつく二人をみながら、ブラックローズはイベントで盛り上がっていたミストラルがいない事に、気付く。
「あ・・・ミストラルは?」
「ここっ♪」
「だぁあぁっ!?!」
「悪いけど・・・お二人の邪魔はさせたくないんだよねぇ~。ごめんね。。」
ミストラルが立ちはだかる隙に、カイト達は路地裏の方に歩いていってしまう。
「え、ちょっと・・・っ、あれってかなり危ないシュチレーションじゃないのよっ!」
「(ぼそり)だから萌えるんじゃない」
「は!?」

にやりと不敵に微笑んだミストラルは、ブラックローズの耳もとで囁いた。

「ファリウゾットぉぉ~」
「きゃぁああーっ!!!!!」






そのころ、入り組んで誰もいない、マク・アヌの奥地で。

「約束したけど・・・優しくしてよね・・・?」
カイトはつぶやいた。
「ああ。なんならここでやってもいいんだが」
「駄目だよ!」
「わかった、わかった(笑)」

二人は手をつなぎ、仲良く歩いている・・・・・・
が、しばし無言の空間が生まれた。

「本当に、だよね・・・?」
「本当だ。優しくはするが、先にいってくれるなよ」
「・・・バルムンクって、ほかの人とそういうことしてたの?」
「してない。お前にホレたから、お前だけに、だ」

バルムンクは、そんなに心配なら・・・・・・、と、小さくつぶやいて、カイトを抱きしめる。

「体験版でもプレイしてみたいか?」
「体験って・・・・・・んっ!」

バルムンクの唇がカイトの唇を覆い、閉じられた唇を舌でつつく。
少しだけ開いたらそこに舌を入れ、反射的に逃げようとしたカイトの舌を絡め取った。
「・・・っ、いきなり何を・・・って、駄目だってば!」
手を服に伸ばしかけたバルムンクの頭に、ごつん、と頭をぶつけてやってから、カイトは怒鳴った。
「こんなところじゃ嫌だよ!」
「誰も居やしない、それに、パーティーモードにするのを忘れるなよ?」
「体験版なんだから、ここでおしまいにしてよ!」
「これは手ごわいな・・・。だが、体験版はもう少し先までだ。強制終了は許されないぞ?」

怯えたカイトの口を唇で塞ぎ、バルムンクの指が服に手早く回る。
バルムンクは片手をズボンの中に差し入れて、未熟に震えるカイトの中心を握りこんだ。

「・・・っぁ!」
声にならない悲鳴がバルムンクの耳に届く。
「大丈夫だ。こんな場所でいかせたりしないからな」
「そういうことじゃなくて・・・」
「やめた方がよさそうだ」
ふと、気付くと、バルムンクがカイトの服を直し、先に行かせようとしている。

「いくぞ。俺のホームはすぐそこだからな!」

えっ、と、戸惑っているカイトを横向きに抱いて、バルムンクは猛スピードで走っていった。

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それは、ちょっとした事故だった。
ウィルス汚染によるΩサーバーの一時的閉鎖が、TheWorldに激しい揺れと振動をひき起こしたのだ。
それによって一時的にさまざまな障害が付き纏った。

「マク・アヌから出られない!」
「キャラが動かないよ!」
「ノイズが走ってる!」

そんな中、カイトはカルミナ・ガデリカに来ていたのだが、酷い揺れに、呆然と立ち尽くしていた。
「サーバー・ダウン・・・・・・?」
ぐらぐらとは揺れるが、グラフィックが壊れる訳でもない。と、その時。

ブゥン・・・

こんな非常事態にカオスゲートを使う人間が、彼の目の前に転送されてきた。
Ωサーバーに最も近く被害が強いΣサーバーにいたのか、酷く慌てている。
そして、その人物は、彼が良く知る人物だった。

「バルムンク!」

カイトが駆け寄ると、バルムンクは力なく崩れ、がっくりと膝をついた。
石畳の床に両手を当て、荒い呼吸を繰り返す彼の肩に手を置いて、カイトは話し掛けた。

「大丈夫?」

バルムンクは顔を上げた。顔面蒼白で、疲れた顔をしている。
カイトは彼の片手をしっかりと握り、優しく微笑んだ。

「ここはまだ安全だから・・・あっちに行こう。」
「・・・すまない」

ゆっくりと彼を抱き起こし、路地裏の方に連れてゆく。
ノイズがバチバチと走り、地震が激しく続く中、壊れる事のないグラフィックの中を必死で歩きつづけた。
二人は極限状況におかれていた。

「カイト」
「なに?」
「・・・・・・なにか変じゃないか?」

ぴたっ。

一人称視点にしたはずは無いのに、いつの間にか視点がかわっている。
それに・・・

「ノイズ音が耳に突くように響くんだが」
「そんなはずは・・・・・」


キーーーーーーーーン!!!!!


「うわっ!」
「何だこの音はっ・・・!」

目の前が真っ白になった。白い視界の端の方で、なにかがチカリと光ったかと思ったら、強烈なフラッシュが大きく走る!
身体が浮くような不自然な感覚を覚えながら、必死で、見えない目を閉じた。

・・・・・・

・・・・・・・・・・・・






「生きてるか!?」

彼の声で意識が呼び戻された。
幸い、自分にも目の前の彼にも、グラフィックにも問題はない・・・・・・かのように思えた。

「生きてる、でも!」
カイトは手を握ったり開いたりしながら、困惑した表情を隠せずにいた。
「感覚がある・・・っ」

バルムンクは落ち着いた表情でカイトの方を向く。
「こんな状況ですまないが――」
「?」
彼は手の甲についた武具を外し、白い手でカイトの頬に触れた。
「お前に触れられて嬉しい」
「・・・っな、なにを言ってるの」

カイトが抵抗しない事をいいことに、白く細い指先で輪郭をなぞる。


(ここからは無かったので2007年8月に書き足しました)

二人はお互い、じっと見とれあって微動だにしなかった。
目の前にいるPCは3Dなのに温かい。
触れた、触れられたところからお互いの熱を感じるようで初々しく恥ずかしいのはなぜだろう。

「ずっと…こうしていられるなら、このままでも構わないのに」
カイトがそう呟いたころには徐々に視界がぼやけてきていたので、温もりを惜しむようにバルムンクが指を動かす。

「触れたいと思っていたのは俺のほうだ…」

熱っぽいその声にカイトは、自分の顔が真っ赤になったような気がした。

「ぼく…」


カイトの発した言葉は白い光に呑まれ、そのきっかり5秒後に二人は何事もなかったかのようにルートタウンのゲートに立ち尽くしていた。
周囲のPCが次々と疑問の言葉を口にして慌しく走り回る中、 あれはなんだったのだろう、とぼーっと思いをめぐらせる。
望まない混乱であったけれど、あの時間だけは無限に続いて欲しかったと二人だけは思っていたのだった。

crown

「こっちだ」
イベント告知広場で、バルムンクがカイトの手を引いている。
「今日のイベントはあれなんだが、どうする?」
「花畑なんだね」
「こんなのもたまにはよいかな、と」
「(笑)」

今日の限定イベントは春らしく、花畑。
二人組のパーティ限定のイベントで、なにかオプションがもらえるらしい。
エリアはΔサーバーで、90を越す彼らのLVでは余裕過ぎる所ではあるのだが、花畑というキーワードに釣られたようだ。
すでに告知広場には大勢のPCは集まり、オプションの話題で一杯だ。
種類は戦闘とも探索とも書かれていない。ただ、花畑と、オプションについてあるだけだ。

「行ってみたいか、カイト?」
「行きたいのはぼくよりバルムンクなんじゃないの?」
カイトはくすりと笑った。
「じゃあ、行かないか?」
「喜んで」

来た時と同じように、バルムンクがカイトの手を引き、駆け足で広場を去った。
有名PC二人を見つけた数人の物好きが、その跡を追いかけようとして、人に呑まれた。




そこは本当に花畑だった。

エリア内にダンジョンはないらしく、本来草原であるべきフィールドが一面の花畑になっている。
ご丁寧にも、bgmもお手製の可愛い音楽になっており、モンスターに似合わないファンシーなエリアと化していた。

「これは・・・リョ-スの石頭もよくやったものだ」
石頭、という言葉に苦笑いをしたカイトに、バルムンクはたずねた。
「なにか言いたそうだな」
「ううん、なんでもないよ。(笑)」

そんな二人の少し後ろに、銀の甲冑を身に着けた金髪の剣士と、その連れの女性PCが立っている。
「あの人って、ジークがいつも、負けたくないって言っている人?」
彼女に指さされ、ジークと呼ばれた男は苦笑した。
「それは言わないでくれよ・・・」
小さく、マイ、と呟いたようだったが、彼女には聞こえていなかったようだ。

その二人の前で、カイトとバルムンクはヒントを探していた。
「このエリアで何をすればいいんだろう」
カイトは、無意識に可愛く首を捻った。
その行動に目を釘付けにされながら、バルムンクはうなる。
「花畑だから・・・、当たりを探すイベントかもしれない」
といって見渡してみても、何を探せば良いのかも、見渡す限りの花のどこから探せばよいのかもわからない。
つまり、行き詰まった、ということになる。

「まさかとは思うけど、モンスター退治じゃないよね・・・?」
「ここからピッカリ草を探し出せという事なのか?」
バルムンクがしゃがみこんで、目の前の一本を引き抜こうとしたそのとき、その言葉に答えるかのように、花が変貌した!
「サウザンドツリー・・・?」
「これがボスなのかなぁ・・・」
二人は、まさかという顔でそれぞれの武器を構えた。

と、その時。

「分かったぞ、カイト!」
「何が!」
カイトは答えながら双剣で巨大植物を切り裂いた。
「このエリアはひたすら花畑なんだ!」
「・・・・・・答えになってないよ!」

モンスターを軽く倒してからふと横を見やると、宝箱が落ちている。
というか、ありがちなパターンだ。

「開けるの、かな?」
「当たりでありますように!」
何が当たりも何もまだ決まっていないというのに、彼は神頼みしながら気合を込めて宝箱を開けた。


ばん!!


『花冠』

そう、一言かかれた紙が入っていた。
紙切れ一枚以外には何もない。そう、何もない。

「はずれ?」
カイトの呆れた声に、バルムンクは慌てて答える。
「まだだ、まだ!実は紙に触れるとイベントが・・・」
バルムンクはがむしゃらに手を伸ばした。
その手のひらが紙に吸い付くように触れた瞬間・・・

ぽん!

「罠!?」
「物騒なことを言うな!・・・げほっ」

煙のエフェクトに巻かれ、本当に煙い訳でもないのに咳き込むバルムンクの手には、
実に可愛らしい花の冠が、ちょこんと乗っている。

「"花冠"・・・だね」
カイトが言うが早いか、バルムンクは手の上に乗っているその冠をカイトの頭の上にかぶせようとした。
「わっ、駄目だよ!ぼく似合わないから・・・」
「俺なぞもっと似合わん!」
バルムンクはカイトの帽子をひっぱり、脱がせると、その冠を無理矢理はめさせた。
「恥ずかしいよ、こんなの」
「よし、マク・アヌにデビュー(お披露目)だ!」
「駄目!というかやだ!」
「カイト、可愛いぞ!」
「可愛い、じゃないっ」


しばらくその場でばたばたと会話していたが、バルムンクがその手を引くと、二人は花畑をゆっくりと歩いた。

「恥ずかしいよー」
「もっと素直になれ。そうでないと俺一人が馬鹿に目立つんだ・・・」
カイトは、いきなりひらめいた瞳をバルムンクに向けた。
「"そうするよう、務める"」
「うわっ、やめてくれ!・・・その、あのころは・・・すまん!」
「ぼく悩んだんだよ」
「だから・・・・・・悪かったっ!」
「すっごい敵視されたし」

仕方がない、という顔をしたバルムンクが、大きくため息をついた。
苦笑するカイトに顔を近づけると、軽く唇を奪ってみせる。

バルムンクはエンジェル・スマイルで、これでもかというくらいの笑顔で、カイトに視線を送る。

「これで黙ってくれるか?」
「・・・っ!」



その二人を黙って見つめる、香住ことジークと水無瀬舞。
「・・・・・・花冠つけたい?」
「・・・」

clown

「なにあいつ・・・」
ブラックローズが不機嫌そうに呟いた。
「ここまで来ておいて、何しに来た訳?」

とあるエリアで、彼と遭遇した。勿論、彼というのは蒼天のバルムンクのことだ。
彼はカイト達に出会うと、無言で一瞥し、立ち去ったのであるが・・・・・・

「彼は悪い人じゃないよ」
「だからってアンタが悪い訳でもないでしょうが」と、ブラックローズ。
「バルムンクだって・・・必死で何かを探しているような、そんな目だった」
「あたしから見たらあんたもそうなんだけど」
「・・・・・・っ」

その一言で、少し、カイトの声が漏れる。
無表情のまま黙ってしまったカイトに、少し考えるようなポーズを取ったブラックローズが改めて話し掛けた。

「いいんじゃないの」
「え」カイトが返事をする。「何が?」

「あいつが敵だって、アンタの想いは通じるわよ。
軽い気持ちじゃない、本当にアイツに対して何かを思う確信があるなら、時が解決するはずじゃない?」
どうやらブラックローズなりに真剣に考えてまとめた言葉らしい。
優しく、朗らかに、明るく、おおらかに。彼女の性格をよく表した、結論。

「ありがとう」
「いーえ、なんの。」
床に差していた大剣をぐさりと引き抜き、彼女はにこやかに構えた。
「じゃ、進もうか」
「そうね」




その日、数時間後。
Λサーバー・ルートタウン カルミナ・ガデリカ

夕暮れ時の薄暗いオレンジ色の空が、黄昏る。
その光は、ちょっと影のかかったような暗がりに位置する石畳の橋に届く事は無く、高い建物のガラス窓で反射している。
橋の柵になっている石が人の肩位まで積み重なっていて、そこにが紅い双剣士が寄りかかっていた。

「・・・」

彼は無言でカオスゲートを見つめた。

薄蒼い透明な水晶部分がチカリと光る。
カオスゲートは、青白い光を放ってゲートインを促し、促されて現れた一人の剣士が、彼に気付く。
歩み寄ると、相手は下を向いて黙りこくっている。

「なぜそんなに考え込んでいるんだ」
カイトは苦しげな表情で返す。
「それはバルムンクもでしょ?」
「・・・・・・」

今度は向こうが黙った。

「お前とは、ゆっくり話すときが来るような気がする。」
バルムンクは表情一つ変えず、立ち尽くしてつぶやいた。
「ぼくが・・・あの書を開かなかったら、違っていたかもね」
「そう願いたいものだ」
「また・・・」

カイトは下を向いたまま、うつろな瞳で、言った。
「会えたら、何か言って欲しいな」

一瞬きょとんとした彼は、笑顔で背を向けた。
「そうするよう、務める」



彼が足早で去ると、カイトは少し微笑んで、その方向を見つめた。
そしてゆっくりとゲートに近寄った。

ぼくは そんなに邪魔なのかな・・・

きみを想う事は 許されないのかな・・・

っておもってた…

「ぼくはきみを信じるよ」

そう言うと、ふわりと目を閉じて、青白い光に身を任せた。
行く先は・・・・・・メールで頼まれた。


Δサーバーの、ミストラルのところに。

天使のテクスト

靄に包まれたエリアは存在した。見渡す限りの白さ、白、白、白。
地面は、氷が溶けた後のような湿った色。そこに、カイト達はいた。

「みんな、大丈夫?」
リーダーのかけ声に、ミストラルとバルムンクが答える。
「なんともない」
「真っ白いエリアだよねぇ~っ・・・見失いそうだったよぉ~(><)」
ミストラルがため息をついた。
その通り、見失いそうな天候。こんなエリアは他に無い。
「猛吹雪のエリアなら知っていたが」バルムンクが顔をしかめる。「霧は初めてだ」
「知ってる!それってザワン・シンだよね☆」
「ああ・・・もう、取扱説明書には存在しない天候だ。それにしてもこんな天気はありえない」
カイトは落ち着いて周りを見渡した。
こんな時、月長石とガルデニアのパーティーじゃなくて良かった、とも心底思う。
滅多に喋らない人とだと、こういうときのコミュニケーションが成り立たないから・・・

「あれっ?」
ミストラルが何かに気付いて杖を構えた。
「なんか来るよぉ~レアって感じするんだけど、触れたくないかんじかも」
霧の向こうにぼんやりと見えるのは、羽根の生えた何か。
「飛竜虫かなぁ?」
「うーん、あれはそんなオーラじゃない。虫じゃなくて、こう・・・人に羽根が生えたような」
「バルちゃんじゃん」
「俺じゃない!俺はここだ!」
「まさか、天使とか?」

そのとき、霧がゆっくりと動く。その流れはとても落ち着いていて安らかで、波の様だ。
白い霧が雲のように流れ、徐々に薄くなる部分から、向こうがかすかに見える。

その向こうに見えるのは、六枚羽の何者か――

「堕天使・・・!」

ザワン・シンのエリアの話のときに、聞いたような気がした。
エリアの中で、最強のスペクタルドラゴンを倒した時に見えたと噂される、幻影。
上も下も無い不思議な感覚の空間で六枚羽の堕天使を見たという、あくまでも・・・噂。
「Ω病める囚われの堕天使・・・そういう意味だったのか」
「こらぁ、楽しい事をひとりで納得してないでよ~」
「しーっ!」カイトは双剣を持ったまま、唇に指を当てて見せた。「静かにしよう」
二人は小さく頷いて、その方向をじっとみつめた。

太陽の光が差し込む。
暖かな金色と白色の交ざる日差しが、永久の氷を溶かすかのように霧を生み出している。

「靄の正体はこれか!」
「バルムンク、落ち着いて!」
背伸びをしたカイトがバルムンクの口を両手で押さえ、注意深く堕天使を見守る。

「さっき、ザワン・シンの話してたよね。」
ミストラルが小声で切り出した。
「バルムンクはその羽根のオプションを「ザワン・シン」イベントで手に入れた訳だから、もしかして、あの天使の羽根なんじゃない?」
「俺の羽は六枚羽か!」
「バルちゃんが飛竜虫の仲間入り・・・(笑)」
「そんな仲間は嫌だ!」
「バルちゃんは堕天使?」
「違うといってるだろう!」

何者かの六枚羽だけがくっきりとみえた。凍り付いているかのように蒼く、透き通っていた。

カイトは真剣な表情でぼそりとつぶやいた。
「やっぱり、あっちは飛竜虫の仲間かもね」
「すまん・・・取り乱してしまった」
「天使様にもテキストが必要だね(^^)」
「何のテキストだ」
「バルムンクよりカイトのほうが天使っぽいかも」
「えっ」
「カイト様お手本をお願いします」
「ぼく知らないよ(笑)」
「(カイトにオプションついてたら可愛いのに)あはは」

カイトに天使の羽がついた姿を想像して笑う、ミストラル。
そしてその横で無表情で立っているバルムンク。

「(バルムンク、何想像してるんだろう)」
PCが無表情という事は、今ごろ笑い転げているかなんかなのかな?


そのころ、リアルのバルムンクは。
「カイトが天使っていうのも良いかもしれないな」

・・・・・・にやけていたのは言うまでも無かった、ようだ。

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