父は私をいつも通り部屋に連れて行った。
船に乗ったとき見える景色と違って、窓からしか見えない景色はどこか寂しいのだけれども、父も船乗りさんたちも私を心配してこの部屋に居て欲しいと思ってるのに出るわけにはいかなかった。
その時、コンコン、とドアを叩く音がした。
「こら坊主、中にはフローラお嬢さんが居るから入っちゃいかん」
船乗りの人が怒る声が聞こえて慌ててドアを開けた。そこには先ほどの紫のターバンの少年が立っていた。
「あ、さっきの…。この子はわたしの友達なの、だから入れていい?」
船乗りさんは私がお願いしたら大体どんなことでもいいよと言ってくれる、そうわかっていたからあえて言った。
私は悪い子かもしれない、けれどこの男の子と話をしたかった。
「お嬢さんがそう言うなら…」
見ないことにしてくれた船乗りさんにお礼を言って、男の子を部屋に入れた。
「リュカさん、よね?わたしはフローラ」
「フローラ…よろしくね」
男の子…リュカは少し驚いているようだった。大人の居るところで私が大人しかったからだろうか。
「ぼく、同じくらいの子に会うってあまりなくって。きみは7歳っていうから。ぼくの一つ上なんだね」
「でも本当は何才かわからないの」
「え?」
「ううん、なんでもない」
誕生日は、私が遺跡で拾われた日になっているし、何才かなんていうのも実はわからないことだった。
見た目からして何才だろうと、拾った人が決めたらしかった。
「リュカさんもお父さまと旅をしているのね」
「リュカでいいよ。うん、父さんは何か探してるみたい…」
そう言ってリュカは窓の外を見た。
「海ってすごいよね、こんな沢山の水、どうなってるんだろう」
「空だってどうなってるのかしら」
二人して窓の外の海と空を眺めた。
「海って、水のかたまりでしょ?水は透明なのになんで青いのかな」
リュカがぼんやりと呟いた。
「それは空の色を映してるんだってお父さまが言ってたわ」
「映してる?鏡みたいに?」
「うん」
「…ん、じゃあ空はなんで青いんだろう」
「ううーん…なんでかしら」
「フローラの髪ってお空みたい」
急に、外を見ていたリュカが私のほうを見た。
「目は海みたいな色だよね」
「そう?」
「うん、空と海みたい」
どう返していいのか分からなくて、熱い頬を押さえながらありがとうと答えた。
「リュカの目ってすごく不思議、ずっと見てたい気がするの」
「よく言われるんだけど、僕にはそんなように思えないんだよねぇ」
「鏡で見てみて!」
ぐいっと手を引いて鏡の前に連れてきた。
「うう、自分で自分の目を見るってなんかヘン…」
覗き込みすぎてよろよろと歩くリュカを見て思わず笑いが漏れた。
私は父から聞いた色んな話が出来たし、リュカはお父さんから聞いた話や今まで見た話が出来て、二人でご飯のことも忘れて語り合っていた。
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