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妖精の鏡9

実は家の廊下には非常用の武器が備え付けてあって、モーニングスターという。
杖に鉄球が鎖で結び付けられているもので、近付かずに相手を殴り倒せるものだ。
これをそっと手にとって、修道院から帰ってくる時に来ていたみかわしの服を身に付けて、同じく毛皮のフードとうろこの盾を持って夜中に忍び足でサラボナの門をくぐった。

「フローラ」
「きゃ!」

いきなり掛けられた声に驚いてモーニングスターを振り上げると、降参したように手を上げたリュカが立っていた。

「きみは…ほんと、見かけによらず無謀な人だなぁ…」
「炎のリングをとりにいくだなんて、行って見なければその辛さはわからないわ。
お父さまは簡単に言うけど、普通の暮らしをしてる人を巻き込みたくなんてないの」
「そういう君だってなにその重装備」
「私だってアンディにとりにいけるとは思ってないわ、せめて麓まで行って追いついて止められないかしらって」
「昔から困ったお嬢様だね、フローラは…」

リュカはあげていた手を下げて、差し伸べてきた。

「僕がついていくよ。フローラにはお世話になったから…だから僕がフローラの剣にも盾にもなろうじゃない」
「あなたも昔からその言い方変わってないわ」

手を重ねてがっちりと握手した。

「よろしくね、リュカ」


馬車は置いてきたというリュカについてきたのはキラーパンサーとキメラだけで、リュカはキラーパンサーのことを昔はなした大猫だと笑った。

「猫にしては大きいなと思ったんだけど、やっぱりモンスターだったよ」

あははと笑うリュカに釣られて笑いながらモンスターたちを撫でた。

「プックルちゃんもメッキーも澄んだ目をしてるのね。リュカのこと好き?」
「グルル!」
「好きだからついてきたのよ~?」
メッキーが耳元で囁いてきた。
「リュカだって、あなたのこと好きだからついてきたのかもよ?」
「!!」
思わず耳まで赤くなってしまって、仕返しにイタズラっ子メッキーの尻尾をぎゅっと掴んだ。


リュカは本当に強くて、パパスさんの形見だという剣で敵を蹴散らしていった。
私が回復魔法を使えるということを知ると、メッキーも回復をやめてブーメランを器用に振るうようになった。
夜が明ける頃、「実はルドマンさんからも頼まれて」とリュカがつぶやいた。
頼まれていたことを言わないで居るのには罪悪感があったらしい。

「ルドマンさんはアンディはどうでもいいにしても、フローラが無茶なことをしなければいいけれどもって言ってた。
念のために街の外で待ってたけど、まさかそんながっちり装備してくるとは思わなかったよ…」
「用意は入念に、ですわ」
「そうだけど…」

ねえ、と声をかけてくる。

「アンディのこと好きってわけじゃあないの?」
「アンディはただの幼馴染よ…。
あの人にドキドキしたこととか無かったわ、ほんとに友達なの」
「好きで、無茶してほしくないのかと一瞬考えたよ」
「いやね、みんなそうやって疑うのよ」
「そっか」

リュカはそれ以降何も言わなかったけれど、何を考えていたのだろう。
それを当てようとあれこれ考えるけれどわかるはずもなかった。
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