忍者ブログ

天球ギャラリー

小説、イラストの保存庫です。
MENU
このサイトは次のURLに移転しました。
http://ten.zemlyan.com/
新URLへ移動します。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

花嫁は勇者様6

フローラが目を覚ましたのは日が暮れてからで、彼女は用意された夕食を見て申し訳なさそうに頭を垂れた。

「ごめんなさい…!
リュカさんを守らなきゃって思って飛び出したのは覚えてるんですけどその後全然…。
気を失ってしまって…足手まといになって本当にごめんなさい」

「いやいや、そんなこと全然ないから!
ほら、冷めるから食べて、僕の料理じゃ口に合わないかもしれないけど」

リュカはあえて天空の剣のことは話さなかった。
彼女が自分のことを、旅においては役立たずで、家においては相続の景品のように扱われている気がすると思い込むのだとしても、今すぐ彼女に先ほどのことを尋ねることは…リュカにはできなかった。



疲れたフローラを馬車で休ませながら、リュカは少しはなれた場所で星を見上げながら物思いに耽っていた。

あれは一体なんだったのか…考えても答えは出ない。
なだらかな平野と立派な白い橋が織り成すサラボナ近辺の美しい景色と月明かりの下で、腕を組んで難しい顔をしているリュカにマーリンが話しかける。

「フローラのことじゃな」
「…そうだよ」

フローラが倒れた後、駆け寄った時にはもう髪はすっかり青に戻ってしまっていたが、一度抜き放たれた天空の剣は鞘には戻っていなかった。
リュカがフローラを優先して、とっさに剣を拾い上げて鞘に戻してしまうと、その後どうやっても剣を抜くことは出来なかった。
剣の達人であるピエールでも、もちろんリュカでも誰でも剣を抜くことは出来なかった。
そう、サンタローズの父の研究室にもそういった日記が残っていたのだから間違いない。

父は自分が装備できないことを非常に悔しがっていた。
この剣は…選ばれし勇者にしか自分を鞘から抜くことを許さない誇り高き剣なのだ。
その勇者は、自分ではないとわかってしまったからだ。
父も、リュカも、その勇者を求めて大陸を彷徨ったが、この剣に相応しい勇士は誰一人居らず、どんな屈強な豪腕男にも鞘と剣を分けることは出来なかった。
それが、記憶にないとはいえこの細くて折れそうな腕をした、戦いに向かないお嬢様が鞘と剣をたやすく分けてしまった。

前のほうで倒れていたピエールは見ていなかったが、メタルライダーを一閃したこの剣の切れ味をリュカとマーリンは目の前で見た。
あの剣には彼女の腕の細さなど関係ないようだった。
まるで、御伽噺に出てくる魔法の剣のように、彼女を害そうとするものをたやすく切り裂く…
勇者のことを屈強な戦士に違いないと思い込んでいたが、彼女が見せたあの彼女でないような表情、燃えるような瞳、人間とは思えない輝いた髪の色、そして何より天空の剣がなんと似合うことか。
リュカは悔しいことに、あの状況においては、驚きと緊張に支配されて一歩たりとも動けなかった。
フローラなのか、フローラではないような彼女の放つ凛とした神々しい雰囲気に圧倒されたのである。

それに、彼女が唱えた回復魔法はベホイミではなかった。
その場の仲間全員を回復させてしまうほどの大魔法をフローラが使えると述べたことは今までなかった。
ベホイミ、マヌーサ、ラリホー、ルカナン…修道女らしい補助魔法ばかりを習得していた彼女は、もっと魔法の勉強をしておけばよかったと後悔を口にしていた。
マーリンが使える攻撃魔法を少しでも習えないかとまで言っていたほどである。

「あれは、フローラじゃが、フローラではないのかもしれん」
「どういうことですか」
「伝説に残る天空の勇者は、自分が最初から天空の勇者だとは知らなかったんだそうじゃ。
魔物から狙われ、お前が天空の勇者か、と問われて知ったと…」

もうサラボナは近い。

フローラが伝説の勇者だとしたら…それはフローラを死と隣り合わせの戦いに巻き込むことになるということだ。
サラボナで彼女の親が認めた男と穏やかな暮らしをするほうが彼女には似合う、リュカはそう思い始めていた。

その男は自分では決してないだろう…。

彼女に自分と同じような苦しく険しい道を、剣片手に血に濡れながら生き抜くということを強制したくなかった。
あんなに彼女が誰かと結婚してしまうことにざわめいていたリュカの心は、湖面のように静かであった。

フローラのために、この残酷な事実は黙っておこうとリュカは決めた。

彼女は非常に徳が高く恩に厚い人だから、自分だけが天空の剣を使えるなどと知ってしまっては、絶対にサラボナにおさまってはくれない。
それこそ世界の為に身を粉にする決意をしてしまうに違いない。
それに、彼女は魔物から狙われるようになるだろう。
あの忌々しい光の教団、ゲマや偽皇后のような凶悪なモンスターに付け狙われるようになってしまう。

彼女には…剣より花を持っていて欲しい。
血に濡れた獣道を知ることなく、純粋無垢な微笑で佇んでいて欲しいから。
自分も、きっと父であるルドマンさんもそう思うだろうから、と。

リュカはその旨をマーリンに話した。
夜である上にフードを被っているからマーリンの表情はつかめなかったが、わかった黙っておこうと了承を得ることが出来た。

しかし、その了承の後にマーリンは小さく呟いた。

「果たして、それで本人が納得するかはわからんが…」
PR

Comment

お名前
タイトル
E-MAIL
URL
コメント
パスワード

Trackback

この記事にトラックバックする

× CLOSE

What's New

メニューはBlog上部にあります。
★ Readme>当サイトについて をご一読の上、自己責任でご閲覧ください★

HIT >>次480000

最終更新: 移転しました。(07/30)

管理人:古川晃
 

拍手・コメントなどお気軽にどうぞ

アンケート

Quickvoter

Q.第2回更新してほしいジャンル投票

主ミレ(DQ6)
主フロ(DQ5)
DQ9
海闇(遊戯王)
マテリアルパズル
その他
※作品傾向:エロ

ブログ内検索

management

アクセス解析

× CLOSE

Copyright © 天球ギャラリー : All rights reserved

TemplateDesign by KARMA7

忍者ブログ [PR]