忍者ブログ

天球ギャラリー

小説、イラストの保存庫です。
MENU
このサイトは次のURLに移転しました。
http://ten.zemlyan.com/
新URLへ移動します。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

この場に留まる口実

(「ライン」の続きです。)

レイドックの城下町は活気に溢れている。
ただ、普段と違うのは、いつもに増して学者や魔法使いが多く通りを行き交っていることだろう。
城の前の広場に書かれたおふれには多くの人が押しかけていた。

旅の神父らしき男は立て札を読み上げた。
「なになに、魔法や学問をレイドックに普及するため、知識のあるもの、実力のあるものを求む?
レイドックも変わりましたなあ」
「レイドックが変わったとはどういうことです?」
女の声だ。

「あなたもこのおふれに応募するつもりですか?
いやあ、レイドックといえば、兵卒の強さでは有名なんですよ。
北東のアークボルトも相当ですけど、こちらは船の技術などもなかなかで。
いままで学問や魔法はさほど振興してなかったですけどね。
で、いまのお妃様が勉強熱心だとか。
なんでも、ムドー討伐の際はお妃様が学者を呼び集めて毎日研究に励んでらっしゃったらしいですよ。
王子殿下も最近旅から帰っていらして、非常に優れた方だとか。
そのお二人がレイドックを発展させようとおっしゃったらしいって噂でもちきりですよ!」

神父は城と立て札を交互に見ながら語っていたが、一段落して女を見た。
足先まであるマントに毛皮のフードを身につけ、布が鼻から下を隠しているから目しか見えない。
その目は青銀色で、宝石のように美しかった。
見れば、魔女の証であるサークレットを身につけている。

彼女は嬉しそうに言った。
「もちろん応募するわ」

神父は彼女と連れ立って城に向かった。面接会場は城の庭だった。
がっちり甲冑を着込んだ兵士たちが、神父たちを誘導している。
「魔法を使う者はこちら!我らを倒してみよ」
まさか実力試験があろうとは、と、特に回復や解毒を基本とする神父やシスターが困っていると、神父の横から女が前に歩み出た。

「お願いします」

神父は女の背をいぶかしげに見つめる。
女はすらりとマントの下から剣を取り出した。
萌黄色の刀身に金色の模様が刻み込まれ、紅い宝玉が埋め込まれた不思議な剣だ。

ぱっと素早く女が飛び出す。
兵士が腰を落として剣を払おうとすると、剣が炎を纏った。
「あち!」
それを見たほかの兵士たちが四方八方から飛びかかったが、女の突き出した手が眩しく光った。
「イオ!」
近距離で小爆発を食らった兵士たちはよろよろとふらつき、尻餅をついてしまった。
神父は目を丸くしてその様子を見ていた。

女は戦い慣れているかのように、埃を軽く払ってこちらを振り返った。
爆風が女の服をはためかせ、口元を隠した布が解けて草の上にふわりと舞うと、
毛皮のフードの中にはひどく美しい顔立ちに金色の髪が見える。

「ミレーユ…!」
驚いたような声が響いて誰かが庭をまっすぐに走ってくる。
女は背を向けたままだ。

兵士たちが無様な格好を正した。
「殿下!」

「ミレーユ…間違いない、ミレーユだろ?」
殿下、と呼ばれているのだから間違いない、走ってきた青年こそこの城の王子、イズュラーヒンなのだ。

女はフードをはずし、マントをとった。
長い金色の髪が風に流れる。
陶器めいた白い肌が日の光に照らされ、神父を含めその場に居た者たちを魅了した。

「イザ」
女はいたずらっぽく笑った。
「わたしは合格かしら?」

当たり前だろ、と王子が女の手を取る。
はっと我に返った聴衆や城仕えの者たちが口々に噂を始める。

神父は隣にいたシスターに尋ねた。
「あ、あの女は誰なんです?」
「殿下は長く旅をなさっていました。
あの女性は殿下と共に魔王を討伐した方ですわ…
お祝いの時に見かけたので間違いないと思います。
それにしてもなんとお美しい方なのでしょう」


ミレーユがおふれの話を耳にしたのは、マーズの館からサンマリーノに買出しにいった時だった。
ついでにハッサンに挨拶しにいったのだが、ハッサンが言うにはレイドックは今魔法を教えられる人材を募集しているらしいという。
相当厳しいようで落第する者ばかり、合格者もわからず、世界中からレイドックに学者や魔法使いが集まっているのだとか。

「ま、カルベローナやダーマがこっちにはないからよ、ゲント以外ないじゃねえか?
レイドックが力を入れるのもわかる気がするぜ。
ダーマにいったときの感動みたいなもんがこっちの世界で味わえる所ってないもんな」

ハッサンは旅の間もずっと言っていた。
夢であろうと信じれば現実になる、そうでありたい、自分たちだけではなくほかの人もと。

レイドックで魔法を教えられればイザのそばにいられるかもしれない。
そう思ってミレーユは城門をくぐった。
イザの仲間としてではなく、一人の魔法使いとして。

「そんなの。ミレーユじゃあうちの兵士がかないっこないよ。
というかメラゾーマのひとつやふたつで城が吹き飛ぶかもしれない」

イザは苦笑した。

「旅がなくても、魔王がいなくても、あなたのそばにいられる理由がほしかったの」
「仲間だけじゃなくて?」
「仲間だけじゃなくて」

これなら、とミレーユは言った。

「旅するあなたはみんなのもの、だけどお城にいるあなたはわたしだけのものだわ、ちがう?」
「ミレーユ…」

イザの腕がミレーユを抱き寄せる。

「愛してる…」


お題提供元:http://members2.jcom.home.ne.jp/seiku-hinata/index.html
PR

Comment

お名前
タイトル
E-MAIL
URL
コメント
パスワード

Trackback

この記事にトラックバックする

× CLOSE

What's New

メニューはBlog上部にあります。
★ Readme>当サイトについて をご一読の上、自己責任でご閲覧ください★

HIT >>次480000

最終更新: 移転しました。(07/30)

管理人:古川晃
 

拍手・コメントなどお気軽にどうぞ

アンケート

Quickvoter

Q.第2回更新してほしいジャンル投票

主ミレ(DQ6)
主フロ(DQ5)
DQ9
海闇(遊戯王)
マテリアルパズル
その他
※作品傾向:エロ

ブログ内検索

management

アクセス解析

× CLOSE

Copyright © 天球ギャラリー : All rights reserved

TemplateDesign by KARMA7

忍者ブログ [PR]