平穏な山奥の村ライフコッドに一行が姿を現したのはそれから程なくしてであった。
美しい白馬を連れて、奇抜な4人を連れたイザは村人の目線を気にしつつ、教会の戸を押した。
「どうしたイザ…ぬ、そちらの方々は?」
「精霊さまに祈りに来たんです」
チャモロの勧めで全員席に着いた。
「イザさん、代表して何か言って下さい」
「え…」
イザはすらすらと祈りの言葉を言えるような器用な男ではない。
勿論、ここでは器用というのはキザとか、狡猾という分類の器用という意味だ。
一生懸命回らない頭で考えて、やっと出た言葉は、
「精霊さま、山の精霊さま」
ぎゅっと目をつぶってイザは眉間にしわを寄せた。
「ラーの鏡を直してください!
俺たちあれがないとムドーを倒せないんです!どうかお願いします!」
誰も何も言わず、教会の中はしーんとしていた。
やっぱりダメか、そう無理に明るく笑おうとしたイザは、目を開けて驚き、椅子から滑り落ちそうになる。
目の前に半透明の美しい女性が立っているのが見えて、思わず目を白黒させた。
――この世界の鏡は、割れてしまいました。
誰かの、ごくりと唾を飲む音がより緊張を高める。
――この世界ではもう鏡を直すことができません。
「じゃあどうしたら」
――鏡はかつて妖精たちが使っていたとされます。
あるとき、太陽神ラーの妹君が妖精の差し出した銅の鏡を覗いた所、神々しい光を放っていたせいで普通の鏡には映らなかったのだそうです。
鏡に嫌われたとふさぎこんでしまった妹君の姿を映す鏡を作るため、ある精霊が星や月のきらめきから作られた剣を溶かして鏡を作りました。
それがラーの鏡です。
「美しさは罪ね…」
と、バーバラ。
ミレーユがバーバラの脇を肘で小突く。
――実はこの世界にあるラーの鏡は、私がこの世界に移り住む時にラーから頂いた鏡。
今話した伝説の後に同じ製法で作られた鏡なのです。
ですから、私が前いた世界に行けばまだ他の鏡があるはずです…
「あの鏡はイリス人が作ったんだとばっかり思ってたわ。違ったのね」
と、ミレーユ。
――あの鏡は人の手では作ることができません。
たとえ優れた技術を持ったイリス人であったとしても。
…さあ、今日は休むのです。
明日の日が昇る頃、村の中で一番高いところで東の空を見てお待ちなさい。
あなたたちを鏡のある世界へと送ってあげましょう。
おやすみなさい、私のかわいい勇者たちよ。
ぽろ、イザはふと自分の目から涙が流れていることに気付いた。
なんでだろ、そう不思議に思いながら涙を手の甲でごしごしとぬぐって立ち上がった。
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