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天球ギャラリー

小説、イラストの保存庫です。
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例えば君に恋人が出来たら

なんだか云々と悩ませると情けない男みたいですねww
こういうのは女の子に悩ませるほうが様になるんだけど…
書いてしまったものは投稿してしまおう

-----

ミレーユは故郷に恋人がいるんじゃないか。
そんな下らない「もしも」を考え始めたら止まらなくなってしまった。

ミレーユは自分の話をあまりしない。
どこからきたのか、きょうだいはいるのかとか、親の仕事は、とか…
話したくないってことは関係ない話なのかもしれない。

想像して苦しくなるのは、俺がミレーユのことが好きだから?
気付くとミレーユのことばかり考えてしまっているのもそうなのか?
不安要素があるとそこにひっぱられてしまう気がする。
考えたくないのに…

不安を口にするのは憚られるので、とりあえずためしにバーバラ恋愛師匠に聞いてみることにした。

「ミレーユに恋人がいたらどんな感じかって?お似合いな男?」

バーバラは唖然としたが、すぐに面白そうに笑い出した。

「どーしちゃったの、イザくん?そんなにミレーユが気になっちゃった?
…はやく言えって?うーん、そぉねえ。
案外正反対のタイプなんか合いそうじゃない?
明るくてミレーユが頼りにしちゃうみたいな男!
もし同じタイプだったらミレーユが気を張りすぎて疲れるとみた!」

ミレーユはクールで完璧な感じだから、そういう男のほうが合うのかなと思っていた。

「明るくて頼りになるといえばハッサンとかあてはまっちゃうけど」

自信満々に語ったバーバラは想像の世界に入っていた俺を現実に引き戻した。
俺は慌てて否定した。

「あのふたりじゃ、ないだろ」
「さてねぇ~どうだかー」

話題を振ったくせに口笛吹いて歩き出すバーバラを軽く睨んで、空を見上げた。

夕暮れの空は金色の糸を引いて赤く染まろうとしている。
闇が訪れてまた考えてしまうだろうか。
彼女に他の男がいやしないかということを。
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小さく開いた距離が始まり

歩けば誰もが振り返る冷酷な美女、だけど中身は面倒見が良くて優しいお姉さん、それがミレーユだった。
ハッサンもミレーユもイザにはないひらめきのセンスがあるようで色々と思いつくことが多かった
(無論結局実行するのはイザの役目だ)から、ミレーユから指示を受けて何かと準備をするのはいつもイザの役割だった。

新しく仲間になったバーバラはそっちの話題に熱心なようで、イザとミレーユについてもしつこく事情聴取してきた。
イザはバーバラに言われてはじめて、男二人女一人の旅なら男が女を取り合うことが多いと教え込まれて納得した始末で、イザ自身はそんなことを考えたことはなかった。

バーバラはその意味でも新しい風を吹き込んだようである。

少し意識して見ると…つまり街ゆく人々から見れば自分たちはどう見えるのかとか、考え出すと面白いのだが少し怖い。
自分たちそれぞれがまだ知らない秘密を抱えているかもしれないし、他の人から見たら自分が思ってもないような思われ方をしているかもしれない。
バーバラに言わせれば、ハッサンは故郷に幼馴染の女がいて密かな恋心を抱いているだとか、意外と一途だろうとか、一人前になったらカッコイイ自分を見せに帰るはずとか、ハッサン一つとっても新鮮だ。


イザがバーバラに自分のことを見てもらおうとたずねると、バーバラは探偵のようにキメ顔で唸った。

「イザってさ~、女の子に慣れてるよね」

あ、変な意味じゃなくて、とバーバラ。

「女きょうだいいるでしょ?
家族に女がいる男って女に慣れてるのよ。
だから女なら何でもいいーとかなりにくいの。
ほら、例えば最初にあたし見ても『女がいる!』って思わなかったハズ!」

確かにそうだ、とイザが大きく頷くとバーバラは残念そうに遠い目をした。

「かわいそうにあたしの魅力に気付けなくて…」
「え?」
「あーなんでもない!なんでもないよっ!どうせあたしは小娘だもん!
…小娘のあたしはともかく、ミレーユとかどうなのよ、イザには女に見えないわけ?
まぁちょっとキレイすぎて怖いけど」


その後、イザはミレーユを観察してみた。

焚き火にかけた鉄の鍋を掻き混ぜる白い腕、丸太に腰掛けて長い足を抱きこむように座っているミレーユ。
オレンジ色の明かりに照らされる頬は陶器のようになだらかな線で、汗で流れた化粧を拭い去っても大して変わらない顔、そして今日モンスターに切られて血を流した唇。

イザは改めて、こんな美しい女性が一緒に旅をしているのだと
…寝食共にしているのだという事実を思い知った。

(ミレーユ、ときどき物憂げな顔するけど、誰のこと考えてるんだろう)

もしやミレーユも故郷に幼馴染の思い人が…なんて、バーバラのハッサン妄想を当てはめてみたりしてイザは身震いした。

(なんだか嫌な感じがするからやめよう)

イザにはミレーユが誰かの女になっている姿がとても想像できなかった。
自分たちはいつまでも仲間で居るんだと気楽に思っていた。
でもそうじゃなくなる時もくるのかもしれない、イザはふと不安を感じた。

(ミレーユに言ったら笑われるんだろうな。いや誰にいっても笑われるか)

この気持ちは自分の中だけにしまっておこう、イザはそう決めたのだった。

新世界のオルゴール10

ゼニス王の城の一角、窓の外から差し込むやわらかい日差しの下に背丈の短い草が生えている。
その草の上に安置された不思議な色のだいぶ大きな卵を、バーバラは頬杖をついて見つめていた。

(何が入ってるのかなあ…)

バーバラには孵し方は分からなかった。
ただ、本能的にこれを開けることを知っていただけである。
だが、まだ開けることはできなかった。
開けることは、ある人たちを急がせてしまう。

…バーバラにはいつ開けるか分かっていた。

「なにしてるんだこんなとこで」
「テリー」

バーバラはしゃがんでいた足を伸ばし、腕を組んで仏頂面をしているテリーを見た。
「卵をちょっとみてた」

「でかい卵だな」
テリーは卵に近付く。
「俺がアークボルトで壊した緑色のドラゴンの卵に似ている」

「あんなヌメヌメと一緒にしちゃかわいそうだって」
「ふん、かわいそうもなにもあるか」

テリーは卵にむしろ好意を持って接していた。
うっかり割らないように距離をとっていたし、表面を撫でてみたり眺めてみたりしている。

「あんた意外と…動物好きなの?」
「昔よくモンスターと遊ぶ夢をみたりしたな」

彼は遠い目をしながら微笑んだ。

「モンスターにもちゃんと両親がいるんだ、けど両親は子供の入った卵を置いてどこかへ行ってしまう。
生まれた子供は別の誰かに育てられる」

「なにそれ、なんでそうなっちゃうわけ」
「さあな。俺にもよくわからん。あの世界のルールだったんだ」

卵の表面が虹色に光った。

「この卵にも親はいたんだろうか…。
ま、俺に魔物と天女と人間の親がいたんだからこいつにだっているだろうが」

「…卵の親はあたしだし?」
「お前に動物育てられんのか?大丈夫なのか?」
「いつもファルシオンの世話してるもん!」
「エサしかやってないだろ」
「しかって…」

バーバラはテリーを睨んだ。

「みてなさいよ、超かっこいい子に育てるんだから。
テリーなんてちょいっと倒してみせるんだからっ」

「俺に勝とうって?ハッ、そんな無理な目標立てるなよ」
「馬鹿ね、デュランにもイザにも負けたくせに」
「あれは正気じゃなかった」
「じゃああたしが今マダンテであんたを!」
「唱え終わる前に口を押さえればいいんだろ!」

二人は顔を近づけて罵り合っていたが、ふと口を閉じる。
何か小さな音が卵の方から聞こえる気がしたのだ。

「おい、なんか音が聞こえる」
「動いてる?」

バーバラが卵に触ると、卵が少し揺れた。

「テリー、動いてるよ!」
「どれ」

テリーも手を乗せる。卵がまた揺れた。

「何が入ってるんだろうな。俺の予想はドラゴンだ。
このサイズは間違いない。それもかなり大型」

「卵に詳しすぎ、あんた。モンスターマスター?」

苦笑しながらテリーは卵を撫でる。

「懐かしいな、なんか。なにもかもが。懐かしいのにこんなに近い」

テリーはこの卵とその中にいる存在に不思議な親近感を覚えた。

「バーバラが親じゃ立派になれないだろ、俺が育ててやろう」
「ちょっとやめてよ!テリーに育てられたらひねくれそう!」
「なんだと?!」

また二人はわぁわぁと口喧嘩を始めた。
その声の中、卵は嬉しそうに揺れていた。

身分差を埋める闇

―――あまり意識したことはなかったけれど、彼は王子様なんだわ。

ミレーユはそう一人ごちた。

レイドックで王子に間違えられて(いや本当はそうなのだが単に記憶がないというだけで)、改めて認識させられて、
そしてライフコッドで本当の彼に戻ったとき、今までのイザに少し気品がプラスされた気がしてどうも心に引っかかりを覚えてしまう。

仲間としては全然何も変わらないけれど、躊躇っているのは自分の恋心。

世界に知れ渡った強国と言えば、フォーン、アークボルト、レイドックそしてガンディーノ。
彼は両親のムドー征伐挑戦や、彼自身の功績によって、レイドックの強さを全世界に広めている。
レイドックの王子は国民にも好かれ、女子供からも絶大な人気がある。

暁の星、イズュラーヒン。

誇らしいのに、誇れるほど手が届かない人になっていく。
いいえ、元々手なんか届かない人だったわ。

私はといえば、先代のガンディーノ王の妾になりかけて牢屋行きになった女で、魔法使いギルドの名も無き魔女の一人にすぎない。
彼との関係は仲間。
この旅が終わってしまえば私は居る場所を失うのだ、そう思うと旅がいつまでも終わらなければいいのにと暗いことを思ってしまう。

正直、魔王が四人もいてよかったと今は思っている。
その分だけ旅が長くなるから。

彼の声を聞く時間が増えて、彼の横顔を見つめている時間が増えるから。
あとどれくらい彼の側にいられるのだろう、いつもそう考えている。

ああ、たまたま竜を呼ぶ笛を与えられて役割をこなすために仲間になる運命にあっただけで、彼らの強さについていけなければ私は用済みになってしまう。
世紀の大魔女に、ゲントの神の子といった輝かしい人たちが居る中では技を磨くことを怠れない。
怠らなくても生まれつきの差が存在しているのに、もっと差が開いてしまうのは嫌だわ…。
ハッサンは特別だから違う、彼はもはやイザの相棒となるべくしてラーの書に予言までされていた男よ。

考えれば考えるほど泥沼にはまっていく。
分かっているのに考えることをやめられない。

今はただ、魔王という闇に希望を埋めて抱きしめるだけ…


お題元:http://members2.jcom.home.ne.jp/seiku-hinata/index.html

新世界のオルゴール9

自嘲気味の笑い声が部屋に響く。テリーは鼻で笑った。

「『魔性』がなんのことを指すのかさっぱりわからないな。
俺はこうして普通に生きている。
フン、それともある日急にこの皮を剥いでバケモノになるとでも言うのか?」

フランが答える。

「魔族とは、自然の生き物に魔法が影響して特殊な進化を遂げたものを言う。
特殊な進化を遂げたがゆえに、生まれながらにして魔法を使うものや火を吹くものも居る。
魔性は魔法の強さに引かれる属性のことだ。
魔族が上の者に従ってしまうのは上の魔族ほど遺伝子に組み込まれた魔法の影響力が強いからだ。
自然の生き物は魔性を持たないから、魔法の影響力の違いで上下を決めることはないし、単なる魔法の影響力で暴れることもない」

「テリーは生まれながらに魔性に目覚めていました。
神々やフランには、テリーは人間離れした体力、素早さ、優れた魔力を持つ戦士になるだろうとわかっていました。
やっと言葉を話せるようになったばかりのミレーユとまだ歯も生えていないテリーを地上に送り出すという神々に私たちは抵抗しました。
しかし、私たちはただの創造物、相手は神、かなうわけがありません。
泣く私たちに神々は成長を見守るようにと水晶球を授けました。
それ以来私たちはずっとあなたたちを見守ってきました…。
ミレーユがシェリスタをかばって蛇と戦ったとき、ムドーにナイフをつき立てようとしたとき、魔性が目覚めたことを知りました。
でもあなたたちは、魔の力に飲み込まれず自分の力にしてデスタムーアを倒してくれました…。
本当に、本当に強くなって…。
私たちが思ってたよりずっと強くて…」

女性の目から涙が零れ落ちた。

「ごめんなさい、なにもできなくて、なにもできなくてごめんなさい…。
いままで本当にごめんなさい。
でも、私たちのことは忘れてください。
あなたたちの父はジャームッシュ、母はマルタ。
あなたたちは人間なのです…!」

ミレーユがイザの手を離し、テリーの腕をつかんで前に出た。

「私たちの父はジャームッシュ、母はマルタです。
人間として育ってきました。
でも時々、頭が痛むんです。
ギルドのサークレットがこうしなさいと縛ってくるから忘れていたけれど、本当の自分に向き合うのが怖かった。
自分は自分じゃなくなってしまうかも、そう思ってきました。
…今日、私はここに来て良かったと思っています、私を生んだひとたちも沢山怖い思いをして、今まで何も知らない私たちをもどかしい気持ちをずっと見つめていたんだって気付いてよかったって」

「哲学好きなねえさんが気にしすぎなだけだろ…ぐあっ」
テリーのそっけない言葉に、バーバラが肘鉄を食らわせた。

女性はミレーユとテリーの手をとった。
「ああ神様、もう一度この子たちに触れることが叶うなんて」

涙に濡れた頬を魔人の手がぬぐった。
「魔性を封じ込めなかったテリーのほうが悩まなかったようだな。
ミレーユももう、サークレットの縛りは必要あるまい」

魔人の指から青い光が走ったかと思うと、パキンと何かが壊れる音がした。
ミレーユは首を回したり振り返ったり頭を触ったりしたが特に何も変わった様子はなく、首をかしげた。

「今から、以前君が避けていた冷酷な君も本当に君の一部になった。
魔性と向き合い、より良く生きるんだぞ…」

女性は、神様はいつ新世界に旅立つと言ったかと尋ねてきたが、イザが本人たちでなくても血を継ぐものなら良いと言ったと答えると複雑そうな顔をした。

「今は救いに聞こえるかもしれません。
でも、自分の子孫を送り出すと言うのはとても苦しいことですわ。
よく考えてください」


ゼニス城に一泊することになったイザたち一行は、世にも奇妙な料理を食べ、謎の葉っぱが詰まった布団に横になった。
イザが夜中に目を覚ますと、ミレーユが椅子に座って外を眺めていた。

「寝れないの?」
「おきちゃった?」
外に行きましょ、とミレーユは言う。

イザとミレーユは二人並んで城のバルコニーに立っていた。
しばらく沈黙があった後、ミレーユは口を開いた。

「もし、自分の子供に新世界に行かせることになるならって考えちゃうといっそ自分が行ったほうがいいのかなって思っちゃうの」
閉じた目蓋から涙が零れ落ちる。
「勝手じゃない、わたしが行きたくないから子供に行けっていうのは」

「それは、ほんとにミレーユが思ってること?
ほんとはわがままいってでもこっちの世界に残りたいとか思ってたりしないか?」

イザの問いに、ミレーユは額を押さえた。

「…はぁ、いけない癖だわ。
サークレットがもう言ってこないもんだから、自分で自分に言い聞かせちゃってる。
ええそうよ、本当は残りたいわ、イザの側に居たいわ」

イザはミレーユが素直に告白してきたので一瞬驚いたが、照れた顔をごまかすように笑った。

「それに、ミレーユは行きたくないかもしれないけどさ、いつか誰か自分から行きたいって思う人も出てくるかもしれないよ。
うちの父さんみたいに。
城に居てもいいはずなのに自分でムドーを倒しに行ってみたりとかさ」
「それはありえるかもしれないけど…」
「けど、って言ったら始まらないさ。
それとも、ミレーユは俺をおいて別の世界に言っちゃうのか」
「いやよそんなの」

イザをターニアちゃんにとられちゃったらと思うと…とミレーユは小さくつぶやいたが、夜風がびゅうっと吹いたのでイザには聞き取れなかった。

「え、なんか言った?」
「言ってない、言ってないわ」

ミレーユはイザの腕にほっそりとした手を乗せた。
イザの胸に体を預けて、顔を見上げる。

「ねえ…、私がいかないってことは…」
「な、なに?」

イザにはミレーユの唇が妙に妖しく感じた。

「…言ってもいい?」
「何を…?」
「…やだ、わかってくるくせに」
「…」

ミレーユの腕がイザの背中に回される。
イザはミレーユにぴったりと体をくっつけられて顔を赤くした。

「イザ、大好き…」

何を言うのかと思ったがそっちだったか、とイザは心の準備をしたことを少し後悔しつつ、サークレットの縛りがなくなったせいか妙に積極的になったミレーユをますます愛しく思ったのであった。

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