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天球ギャラリー

小説、イラストの保存庫です。
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新世界のオルゴール3

静かな海の世界に、一隻の船が現れた。
人魚の琴をかき鳴らし、繊細な泡に包まれた豪奢な船である。

「ルビス様の神殿はこの辺りだったっけ?」
イザは地図から顔を上げた。

宴会の途中に妙な男が現れ、テリーとミレーユに不穏な言葉を吐いていったあの事件の翌日、事情を聞いて居ても立っても居られなくなったイザ一行は、帰ってきたのもつかの間、ちょっとルビス様の城に行くと言って城を後にした。
ルーラで近くの町にとび、そこから魔物が減った平和な海に船を進め、人魚の力で海底にもぐった所だ。

「それにしても妙だよな」
腕を組んでハッサンが言う。
「そいつは何を言いたかったんだ?」
「あいつは人じゃなかった…」
テリーが顔を上げた。

「耳が尖っていた」
「海の精とか…人魚の部類はそうだけど、あとは童話でしか見たこと無い妖精とか」
「魔物に近いかもしれませんね」
チャモロも頷く。
「あの男、見えるわけでもないのに一直線にテリーさんの所に歩いていました。
テリーさんは影にいたので普通は見えません」
「…あの男、わたしたちの親がどうのっていってたわ…。確かにみなしごだけど。
本当の両親のことは覚えていないけど…。
とうさんとかあさんが拾ってくれたところからしか覚えていないけれど」

ここによる前に立ち寄ったガンディーノでジャームッシュとマルタに聞いたところ、二人を最初に見たのは冷たい雨の日で、傘もなく布の服一枚のミレーユがテリーを抱きかかえてじっとうずくまっていたという。
テリーはまだ赤子であった。
その布にミレーユ、テリーと書かれた紙が挟まっていたと。

「この書き方、どっかで見たことがあるような気がするんだよねえ」
ミレーユの持つ紙を覗き込んで、バーバラが言う。

「ほら、この筆の使い方、今じゃしないでしょ。
Mの書き方がちょっと古めかしいっていうか。
あとこの紙とインクちょっとヘン」
「そうね…もうすごい前のものなのに新品みたい」

ふと、ついていた折り目を伸ばすと皺がなくなった。
驚いた一行は目を合わせ、もう一度ミレーユが折り目をつけ…開いた。
「なんてこと…」

やはり皺はなくなっていた。

これもやってみましょう、とチャモロがコップの水を紙にかけるが紙は湿らずインクもにじまない。
バーバラがメラの炎をかざしても焦げず、やぶこうと力を入れても薄い癖に鉄のように硬い。

「なんなんだこの紙は!」
「これは世紀の発見ですよ!」
「すごい素材だぞ!」
「素材がすごいんじゃなくて魔法でもかかってるんじゃないのか…」

船に影がさしこんだ。
白い城壁が見え、壮麗な城門に近づいている。ルビスの城に着いたのだ。

「いこう」
イザは一同を促す。

「ルビス様に聞いてみよう」


(つづく)
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新世界のオルゴール2

レイドック城のテラスに、二人の人影が見える。
一応立派な格好はしているが着崩しすぎて王族というよりモデルのように見える青年と、珍しく騒ぎすぎたのか髪の毛があちこちほつれている女性である。
二人は旅のことをいろいろ振り返って懐かしげに話をしていたが、ふと青年はまじめに女性を見つめる。

「いつ、また会えるかな」
女性は驚いて、微笑んだ。
「いつだって会えるわよ」
「だって毎日一緒に居たのにさ、いざはなれるとなると」
「私…占い師の修行がおわったら」

女性が何か言おうとしているが、言葉にするのをためらっているのか先が出てこない。
青年は女性の肩を抱いて、顔を寄せた。

「待ってるから…」
「ほんと…?待っててくれる…?」
少女のような心細そうな言い方をする女性に、青年は優しく語りかけた。
「俺が記憶を取り戻すのを、ずっと待っててくれたじゃないか。
サンマリーノでこっちは初対面でさ、あんた呼ばわりして、散々疑ったりしてさ」
「それはもういいのよ、ムドーのせいだし、仕方ないことだわ」
それに、と女性は言う。
「記憶が戻ったあなたは、前より何倍も素敵になってるわ」
「釣り合う男になれたかな」
幸せそうな二人が、急に顔色をかえた。

血の臭いが風に乗って流れてくる。
「…!」
戦い慣れた二人は身構え、屋根の上に目を留めた。

黒い影が立っている。影は手を広げ、乾いた笑いで二人を見下ろす。
「ガンディーノの魔女。人になりきったつもりか」
「…なんのこと」
女性が警戒した声で答える。
「貴様らは人ではないのに、世界が平和になったとかで喜んでいる。
神につくられた存在め。
人が平和になるために、不幸にならなければならなかった存在のおまえたちは、今でも試作品のくせにと、貴様の弟に説教してきたところだ」
「テリー…?!」

「この傷は弟がやった!私は正しいことを教えただけなのにな、ククク…。
本当の親を知らず、存在意義を知らず、運命は過去のことで今は自力で切り開いていると思い込んでいる…警告だ、これは警告なのだよ!」

「ねえさん!」
剣士が廊下を走ってくるのが見える。
「そいつを斬る!」
「待って!」

女性は男を睨んだ。
「あなた何を知ってるっていうの?警告?どういうこと」

男はゆらりと動き、屋根の上から飛び降りていなくなった。

「これは警告なのだよ…」

男の残した不穏な響きが、血の臭いと共にその場に残されていた。


(つづく)

新世界のオルゴール1

闇の中、明るい光と騒がしい音が聞こえる方向がある。
その城の名はレイドック、言わずと知れた世界の勇者の居る城である。
今宵は大魔王デスタムーア討伐の帰路についた王子イズュラーヒンとその仲間たちを祝福する宴であるから、酔いすぎるのもいたしかたない。
民が酔いしれ、兵が武器を放り出して酒を手にするこの日、世界から見たらなんの不安もなかった。
そこに一人の男が、一部限られた者の元へ不安を持ち込もうとしていた。

騒がしい城内では男の姿は不審に見えないらしい、男は民にも兵にも目をくれず、勇者たちの居る場所を目指してしっかりとした足取りで歩いていた。
それこそ見なくても場所がわかるかのよう。
男がゲントの子の側を通ると、黄色い僧服の少年ははっと振り返った。
完全に出来上がっている大工の息子と孤島の大魔女は男に気付く様子もない。
少年は男に気付いた青い稲妻が歩き出すのを確認して男から視線をはずした。

「おまえ、何者だ」

人気の無い廊下まで後を付けてから、軽い殺気を放って、青い稲妻は問う。
「…天空の使いとでも名乗ろうか」
男は低いしゃがれた声で笑った。
黒いフードに皮の鎧、足に巻きついたボロボロの包帯、明らかに異質な男は続ける。

「くくく…世界のはざまが消えるとき、おまえたちはどうなるかわかっているのか。
親がわからぬガンディーノの姉弟よ」

剣士は目を見開いた。腰にさした剣は男の首にぴたりとつけられた。
「貴様らこそ、夢の存在であること」
男は動じずに続けた。
「試験体であること」
「黙れ」
「何も知らずに幸せなことだ」
剣士の美しい顔が険しくなった。
「何が言いたい?」
「貴様らは人ではないのに呑気だと言っているのだ」
「何を言っている…」
男はフードをぱっと払う。
「…!」

「どの世界も神々の審判にかけられるのだ。
神々はより争いのない世界を目指そうとして改良を続ける、その実験台なのだよこの世界は!」

剣士と同じ髪の色で、耳が尖った男は盛大に笑った。
「おまえも、姉も。次のステージへの踏み台なのだ。
世界平和を達成して喜んでいられるか。おまえたちの運命など仕組まれたもの、おまえの姉が人の欲望に巻き込まれることも、おまえが魔王の手下になることも、すべて仕組まれていた!おまえは実験台なのだ!」

「黙れ!」
剣士の振るった剣は確かに男を切り裂いた。
しかし、男はその場に居らず、今のことが現であったと証明してくれるものは剣に付いた赤い血だけであった。

「ねえさん…!」

剣士は走り出した。


(つづく)

DQ6イザミレ:付き合ってるのに触れてもくれない

「ほんと甘えん坊ね~」
ミレーユのやさしい声が聞こえる。
「んもう、どこ触ってるのよ。髪ひっぱらないで。…うふふっ、くすぐったいったら」

くっ、とイザは顔をしかめた。
「うらやましいでちゅか、イザちゅわん!ぷぷぷ…っ」
「ハッサン!」
御者台のイザとハッサンが大きく動いたので、ファルシオンが不満そうに嘶いた。

「モコモンにはああだよ、動物限定なの」
「おまえこないだ両思いかもしれないとか言ってなかったっけ?」
「…言ったさ」
人生初のアタックである。緊張もしたが、それ以上に舞い上がった。
そして今こうである。イザは焦れていた。
「お前も動物化してみたらいいんじゃねーか?」
「馬鹿いうよ」
「鼻は犬並みって言われてたじゃん?」
「モコモンみたいに触られるのもそりゃあ夢だけど…それってなんか違くない?」
「ミレーユに見せてあげたかったなぁ、お前がファルシオン口説いてた時を」
「…あれと一緒か?!」
「もしファルシオンが金髪白肌の美女ならどうだよ?!」
「しないよ!」

ハッサンは子供っぽく反論するイザをよしよしと撫でて、
「姐さん、代わってくれませんかねー?眠くなってきちまった」
と、幌をあげた。
「おまえ…」
「どうぞ、狭いけど」

ミレーユは腰を下ろすと、イザの横顔を見つめた。
「…なに?」
「見てるだけ」
「…ひどいよミレーユ」
ミレーユは楽しそうに笑った。
「ずっとみてたいものなの」
「みてるだけ?」
「じゃあ触るわ」
伸びてきた白い指が頬をつねった。
「む、いふぁい、みれーう」
「うふふ」
自分がもてあそばれているというか、自分で遊ばれているのだけれども、楽しそうにしているミレーユの顔は普段と違うのでついそのままになってしまう。
「俺も触っていい?」
「どうぞ?」
その余裕がなんだか悔しくて頬に手を伸ばした。
唇に指を乗せると、乾いて少しひび割れていることに気付く。
「ミレーユ、乾いてる」
「外じゃこんなもんよ」
「割れちゃうよ」
イザは身を乗り出した。




この先は想像にお任せします!!

お題元:http://members2.jcom.home.ne.jp/seiku-hinata/index.html

恋人同士に見られた日

りんご茶さま拍手&リンクありがとうございます。
お礼に短いですがイザミレをささげさせていただきます。




アモールの町に子供の叫び声が聞こえる。
「イリアったら、まってよぉ」
「ジーナ、追いついてみなぁっ」

イザ達は神父さまから話を聞き、孤児になったらしい二人を引き取ったと知った。
らしいと言うのは、神父さまから聞いたことと現実の老人二名のつぶやきとを合わせてみるとそう考えられるからだった。
あのイリアとジーナはどうなるのだろう?二人はきょうだいなのか?それとも友達?現実に叶わなかったことを夢でどうかなえるのだろうか、複雑な気持ちでイザは見つめていた。

「あまり見つめてると子供たちに変に思われるわよ」
ミレーユが声をかけてきた。
「思われたっていいよ。あの二人の夢なんだって思うともうしばらく見てたい気分なんだ」
「んじゃ俺たち、洞窟の様子とかみてくるぜ」
「僕も水をもらいにいってきます」
「えーとあたし…」
「バーバラもこっちだ、おまえ丸太に乗る係だから」
「えっ、あたしだけ乗るのっ?!」
ハッサンは妙にニコニコと…バーバラの首根っこを掴んで去っていった。

「なあ、ミレーユ」
「なあに」
「これはあの二人の夢なんだろ?」
「…一応そういうことになるけど」
「二人は子供になって遊びたかったの?」
イザの真面目な言い方に、ミレーユは苦笑した。
「具体的にそんなとこまで決めてるわけじゃないとは思うわ。
おそらく、二人で誰にも邪魔されずにずっと楽しく無邪気に暮らしていたいっていうのが夢なのよ。
それから二人が再会して精神年齢が若返ったってこともあるかもしれないわね。
もう一度一緒に二人でやり直したいって思っているのかもね」
「そっか…」

「まだおられたのですか!」
神父さまが驚いた顔で二人を見た。
「熱心なご様子ですな。子供がお好きですか?」
「そういうわけじゃないんですけど。うん、なんか気になってしまって」
ミレーユが横で小さく笑った。
「妹がいるせいじゃない」
「いやはやてっきり孤児を引き取ろうと思っているのかと思いましたぞ。
孤児はまだまだ多くて、引き取り手を待ってる子が多いのです」
「お、おれが子供を引き取るんですか?」
神父はまじまじとイザを見て、ミレーユのほうに首を回し、そして天井を見た。
「…お二人で見るのかと…これは考えすぎでしたな失礼。
私もいくら孤児たちのことが気になるからといって早とちりしすぎましたな、ゴホン」
いまのは聞かなかったことに、と神父は急ぎ足で川のほうへ歩いていった。

(二人でって…ミレーユと…?!)
イザは照れ隠しをしつつ笑いながら言った。
「おれたちで子供の面倒みようとしてるように見えたらしいよ」
いつものような笑いが返ってこなく、不思議に思ったイザはミレーユを振り返る。
代わりに手で口元を隠して斜め下を見ていたミレーユは、じっとイザがこちらを見ていることに気付いてはっとして「な、なに?どうかした?」と明らかに動揺した素振りを見せた。
「えっ、いや、うんと…」
「…」

「人の距離は、心を許している距離なんですぞ!!
私の勘違いではないぞ!いやーもう今日は恥ずかしすぎて穴があったら入りたい。
私が妄想しすぎたようではないですか!違うんです!」
その晩、誰かが酒場でアモールの名水で割ったお酒を飲みながら愚痴っていた。
「え?そこで逃げるんじゃなくて結婚式をうちでやるようすすめればよかった?
あーもうそのとき言ってくださればよいものをっ」

お題元:http://members2.jcom.home.ne.jp/seiku-hinata/index.html

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