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天球ギャラリー

小説、イラストの保存庫です。
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テリーの観察記

テリーは思う、俺は結構鋭いしよく気付く、と。
姉の視線がイザを追っていることもすぐわかった。
これについてバーバラに漏らしたら、あんたこそミレーユ見すぎなんじゃないと返された。

…バーバラめ、こういうときはそう言いやがって、気に食わない。

で、このパーティーに居るうちに大体人間性がつかめてきた。
一番このテの話題に詳しいのはバーバラで、チャモロはわかっていても言わない、
ハッサンは見たままを信じるが怪しいと思えばちょっかいを出す、
当のイザは一番鈍感だ。

最初は、姉だけがイザを目で追ってるんだと思っていた。
(注:テリーは基本的に姉の行動から考えるようだ)
そしたら、そういうわけでもなくて、イザを見てみると姉を目で追ってたり。

「…もどかしい!なんてもどかしい!みんなこれをずっと見てきたっていうのか!」

これについてもバーバラに聞いてみた所、
(注:テリーは人との関わりを避ける傾向はあるが、姉のこととなると厭わない)
ハッサンやバーバラが面白がって色々細工してみたこともあったが「面白くなかった」ので放っておくことにしたという。
しかも、細工しないほうが面白いとか、色々断片的なことばかり言う。

イザと姉はというと、一緒にいる時はいたって普通の仲間ぶってるのに、
お互いはなれるとこれでもかと熱い視線で見てるから、それを見てるこっちが参る。
バーバラ曰く、ミレーユみたいな大人ぶってる(実際大人なのだが)女のかわいい一面が見れるから楽しいという。
ハッサン曰く、イザが恋愛相談してこないかと最近わくわくして待っているのだという。

「まったく…これから魔王とやりあおうっていうのにお気楽だぜ」

馬車は休憩中だ。
ザクソンの村を目指す途中、辺りが暗くなって歩くのが難しくなってきたので今日は野宿となった。
料理担当らしい姉と、その雑用係らしいイザが焚き火を囲んで楽しそうに話しているのを見て、安心するような姉をとられるような微妙な気分になった。
あの笑顔は、俺たちに向けるものとは違うとわかってる。

「ちょいちょい、あまり睨まないでよ」
バーバラが裾を引く。
「いつあの二人がお互いに気付くかってハッサンとかけてるの!」
「おまえら…」
「テリーはどう思う?」
「いつだって関係ないだろ…」

バーバラに背を向けて馬車へ向かう。
ファルシオンの頭を撫でてやっていると、近くで座禅を組んでいたチャモロが言った。
「ファルシオンはオスですよ」
「っさいな、馬の性別も関係ないだろ!」

チャモロはにっこりと笑って、
「テリーさんはクールに見えてシスコンだったんですね」
「ちがわぁ!」
テリーは殴りかかるも、チャモロに足払いをされて盛大に転んだ。

「ふむ、やはり弱点はミレーユさんですか…」
「うっさい!」

この連中がつかめない…!
わかりたくないこんなやつら…!

テリーは姉の笑い声を聞きながら、ひとり悶々とするのだった。
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呼び名

ターニアは本当の妹ではなかった。
ライフコッドに飛ばされた半身がお世話になって、本当のきょうだいだったらよかったのにという想いが夢で実現していただけだった。
ランドがターニアを狙っているのは知っていたし、きっと現実の将来は…そうなるだろう。
ランドからしたらいきなり好きな子の家に男が居候するんだから気に食わなかっただろうな、イザはいまさらだからこそ苦笑できた。

「それにしても、さすがはイザはん、ターニアはんに一切手をつけとらんですもん」
ツンツンがさっきから馬車の中でひどい話ばかりしている。
「普通~舞い降りた男と看病した女は、ねえー。
おにいちゃん、なぁんて呼ばれたら…ぐへへっ
…ちょっ、痛い、バーバラはん痛い!」
「ツンツン下品!イザはそんなやらしくないし!」

話を聞いているとため息が出てくる。
まさかそんなターニアに恋心なんて持つわけ無いじゃないか…
確かにかわいいし、器量もいいけど。
どっちかというと親心というか兄心というかそういう心のほうが…

「イザ?」

御車台にミレーユがやってきた。
隣に腰掛けると、ミレーユが嫌そうに後ろをあごでさす。

「ツンツンがわたしのほう見ながら言うから出てきたわ」
「あいつ…」

イザはミレーユの目を真剣にみつめた。

「俺はなにもしてないよ!」
ミレーユは何がおかしかったのか表情を崩し、お腹を抱えて笑った。
「笑うとこか?!」
「そうよね、わたしにだって何もしないんだもの、ね」
「なんだよその言い方、なにかしてもいいのか?」

馬車の中からは布が邪魔で見えないだろう、思い切って腕を引いてぱっと唇を奪った。
ミレーユの白い顔が赤く染まった。

「冗談じゃ、許さないわよ?」
「本気本気!俺ミレーユにしかこんなことしないもん」
「ターニアちゃんは妹だものね」
「そう、ターニアのおにいちゃんなの、俺は」

二人は見合わせて、明るく笑った。

お題提供元:http://members2.jcom.home.ne.jp/seiku-hinata/index.html

この場に留まる口実

(「ライン」の続きです。)

レイドックの城下町は活気に溢れている。
ただ、普段と違うのは、いつもに増して学者や魔法使いが多く通りを行き交っていることだろう。
城の前の広場に書かれたおふれには多くの人が押しかけていた。

旅の神父らしき男は立て札を読み上げた。
「なになに、魔法や学問をレイドックに普及するため、知識のあるもの、実力のあるものを求む?
レイドックも変わりましたなあ」
「レイドックが変わったとはどういうことです?」
女の声だ。

「あなたもこのおふれに応募するつもりですか?
いやあ、レイドックといえば、兵卒の強さでは有名なんですよ。
北東のアークボルトも相当ですけど、こちらは船の技術などもなかなかで。
いままで学問や魔法はさほど振興してなかったですけどね。
で、いまのお妃様が勉強熱心だとか。
なんでも、ムドー討伐の際はお妃様が学者を呼び集めて毎日研究に励んでらっしゃったらしいですよ。
王子殿下も最近旅から帰っていらして、非常に優れた方だとか。
そのお二人がレイドックを発展させようとおっしゃったらしいって噂でもちきりですよ!」

神父は城と立て札を交互に見ながら語っていたが、一段落して女を見た。
足先まであるマントに毛皮のフードを身につけ、布が鼻から下を隠しているから目しか見えない。
その目は青銀色で、宝石のように美しかった。
見れば、魔女の証であるサークレットを身につけている。

彼女は嬉しそうに言った。
「もちろん応募するわ」

神父は彼女と連れ立って城に向かった。面接会場は城の庭だった。
がっちり甲冑を着込んだ兵士たちが、神父たちを誘導している。
「魔法を使う者はこちら!我らを倒してみよ」
まさか実力試験があろうとは、と、特に回復や解毒を基本とする神父やシスターが困っていると、神父の横から女が前に歩み出た。

「お願いします」

神父は女の背をいぶかしげに見つめる。
女はすらりとマントの下から剣を取り出した。
萌黄色の刀身に金色の模様が刻み込まれ、紅い宝玉が埋め込まれた不思議な剣だ。

ぱっと素早く女が飛び出す。
兵士が腰を落として剣を払おうとすると、剣が炎を纏った。
「あち!」
それを見たほかの兵士たちが四方八方から飛びかかったが、女の突き出した手が眩しく光った。
「イオ!」
近距離で小爆発を食らった兵士たちはよろよろとふらつき、尻餅をついてしまった。
神父は目を丸くしてその様子を見ていた。

女は戦い慣れているかのように、埃を軽く払ってこちらを振り返った。
爆風が女の服をはためかせ、口元を隠した布が解けて草の上にふわりと舞うと、
毛皮のフードの中にはひどく美しい顔立ちに金色の髪が見える。

「ミレーユ…!」
驚いたような声が響いて誰かが庭をまっすぐに走ってくる。
女は背を向けたままだ。

兵士たちが無様な格好を正した。
「殿下!」

「ミレーユ…間違いない、ミレーユだろ?」
殿下、と呼ばれているのだから間違いない、走ってきた青年こそこの城の王子、イズュラーヒンなのだ。

女はフードをはずし、マントをとった。
長い金色の髪が風に流れる。
陶器めいた白い肌が日の光に照らされ、神父を含めその場に居た者たちを魅了した。

「イザ」
女はいたずらっぽく笑った。
「わたしは合格かしら?」

当たり前だろ、と王子が女の手を取る。
はっと我に返った聴衆や城仕えの者たちが口々に噂を始める。

神父は隣にいたシスターに尋ねた。
「あ、あの女は誰なんです?」
「殿下は長く旅をなさっていました。
あの女性は殿下と共に魔王を討伐した方ですわ…
お祝いの時に見かけたので間違いないと思います。
それにしてもなんとお美しい方なのでしょう」


ミレーユがおふれの話を耳にしたのは、マーズの館からサンマリーノに買出しにいった時だった。
ついでにハッサンに挨拶しにいったのだが、ハッサンが言うにはレイドックは今魔法を教えられる人材を募集しているらしいという。
相当厳しいようで落第する者ばかり、合格者もわからず、世界中からレイドックに学者や魔法使いが集まっているのだとか。

「ま、カルベローナやダーマがこっちにはないからよ、ゲント以外ないじゃねえか?
レイドックが力を入れるのもわかる気がするぜ。
ダーマにいったときの感動みたいなもんがこっちの世界で味わえる所ってないもんな」

ハッサンは旅の間もずっと言っていた。
夢であろうと信じれば現実になる、そうでありたい、自分たちだけではなくほかの人もと。

レイドックで魔法を教えられればイザのそばにいられるかもしれない。
そう思ってミレーユは城門をくぐった。
イザの仲間としてではなく、一人の魔法使いとして。

「そんなの。ミレーユじゃあうちの兵士がかないっこないよ。
というかメラゾーマのひとつやふたつで城が吹き飛ぶかもしれない」

イザは苦笑した。

「旅がなくても、魔王がいなくても、あなたのそばにいられる理由がほしかったの」
「仲間だけじゃなくて?」
「仲間だけじゃなくて」

これなら、とミレーユは言った。

「旅するあなたはみんなのもの、だけどお城にいるあなたはわたしだけのものだわ、ちがう?」
「ミレーユ…」

イザの腕がミレーユを抱き寄せる。

「愛してる…」


お題提供元:http://members2.jcom.home.ne.jp/seiku-hinata/index.html

ライン

心此処に在らず。

そんなオーラを漂わせてバルコニーでぼんやり立ち尽くしている息子を、レイドック夫妻は呆れながら見ていた。
初老のレイドック王はにやにやと笑いながら妻に言う。
「やはりわしに似て、一人の女に入れ込んでしまう性格じゃないか、ん?」
シェーラ王妃も負けず、にやりとする。
「イズュラーヒンは私に似て、考え出すと止まらない性格なのよ」

ダーマの神殿の封印された扉の先にある世界を冒険してきてから、名目上「親孝行」でレイドックに帰ってきたものの、自由な時間になると心此処に在らずな様子で毎日遠くばかりみている。
一度里帰りして親孝行することにしたハッサンや同じく里帰りすることにしたチャモロやバーバラのことを考えて、新しい冒険は一年後にすることにしたらしい。
彼は一応レイドックの唯一の王位継承者なので、一年の間にレイドックの子供や兵士に剣を教えたり、城下町やレイドックの影響力が及ぶ地域の視察をすることに決めたらしいが、両親から見ると籠の中の小鳥のような不憫さを感じるのであった。

「陛下、殿下はいつも外を見ておいでです」
「そうなのじゃよ、ふふふ」
「…今日も、志願兵たちに剣術を指導しながら、ホイミとか以外の魔法を教えられたらなあとおっしゃっては窓のほうをご覧に」
トム兵士長、いまはもう将軍だ――が、心配そうにイザのほうを見つめている。
「シェーラよ、あれはどう出るとおもう?」
「暁の王子イズュラーヒンは運命の女神もが味方する子。運命が導いてくれましょう」
「なるほど、なるほどな!わっはっは!」
「えっ、妃殿下、どういうことです?私にもお教えくださいっ!」
三人の賑やかな声がレイドック城に響き渡った。


青い空が広がっていて、レイドックの城門では子供たちが楽しそうに無邪気に駆け回り、武器屋は暇に耐えかねて包丁作りに熱心、レイドックの地下水路は兵士たちの練習場のひとつになっているし、平和というものはいいけれど暇になる。

「はぁ…」
今日何度目かわからない切なげなため息を漏らし、イザは空を見上げた。
「暇だなあ…」

わかっているのだ、暇なことがため息の原因なわけではなくて、ミレーユに会えないことが原因であると。
ルーラで会えばいいのだけれども、彼女は今ガンディーノに里帰りしている。ちなみに弟と一緒だ。
一家団欒を邪魔するわけにもいかないし、でも会いたい…
そんな相反する想いがイザを掻き立てていた。

「何をしてもミレーユのこと思い出しちゃうんだもんな」
自嘲気味に苦笑する。
「思えば、ミレーユと離れてたのだって、ムドーに負けてライフコッドに飛ばされてサンマリーノで会うまでの間だけだし、その間はミレーユの記憶がなかったし…」

いつも一緒だったから余計に気づけなかった。
離れたらこんなに恋しいなんて、なんか自分が情けない。

「はぁ、テリーが羨ましい…だなんて。ミレーユに聞かれたら笑われちゃうな」




水晶の中に、夜中のレイドック城を抜け出してルーラを唱える青年の姿が映っている。
グランマーズはふぉっふぉっふぉ、と不気味に笑って立ち上がり、いまにやってくるだろう彼を出迎えるために扉を開けた。

「イズュラーヒン王子、こんな夜更けにようこそ!ひゃっひゃっひゃっ」
「ほんとお見通しだなあ…」

苦笑するイザを中に通し、椅子に座らせる。
グランマーズはイザに湯気が出ている妙な匂いの飲み物をすすめ、顔を覗き込んだ。

「なんじゃ、色男。夢占いされにきたのかえ?」
「最近夢もみないもんで、占えるかわからないけど」
「夢を見ない、か…。迷っておるのじゃな」
「そりゃ…」
イザは手をぎゅっと握り締めた。
「俺一人でできるなにかならいいけど、そうじゃないし」
「ふむ…」

グランマーズは目を輝かせた。既に先を知ってそうな、意味ありげな笑いを浮かべながら。
イザは心を見透かされている気分になったが、お願いします、と頭を下げた。

「よし!ひとつ占ってしんぜよう」

濃い紫の布がはらりと解け、丸く透明な水晶がつるりと光った。
グランマーズがなにか唱えると水晶がぼんやりと青い光を放つ。
イザには特に何も見えないが、老女の目にはなにかが見えるのかもしれない。
にやにやと笑うマーズの発する言葉を待つことしばし、水晶は静かに光を隠した。

「レイドックでしばし、振興に励むがよい。バランスよく、じゃ。
武道だけではないぞ、学問や魔法もじゃ。
そのうち運命は訪れる。いまの願いはなんじゃ?」

イザは困ったような顔をしていたが、うんと強く頷いた。

「いまの俺の願いは…」


ガンディーノの夜は静かだ。

ミレーユは両親が寝静まった後、一人静かに居間にいた。
テリーはお風呂に入っているからいまだけだ。
小さくため息をついた後、鞄から水晶を取り出して魔法をかけた。
水晶がきらめき、金色の細い魔法の糸が絡まりあって何かを織り出していく。

『ミレーユ、元気にしてるかえ?』

いつもと変わらないグランマーズが微笑んでいる。
懐かしかった、こう平和の中にいて幸せなはずなのに、
仲間たちと戦いの中を生きた頃が楽しく懐かしく感じてしまう。
平和になってしまっては、彼のそばにいる理由もなくなってしまったから。

『今日はいいものを見せよう。
だから元気に暮らしなされよ、ひゃっひゃっひゃっ』

水晶がゆらりと揺れ、ミレーユが一番会いたかった人の顔が映る。

「…ああ、イザ!」

『いまの願いはなんじゃ?』

グランマーズの声に、水晶に映る彼は困った顔をしていたが真剣な目で答えた。

『ミレーユのそばに居たい、それだけだから。
ミレーユのために繋がるならなんでもやるさ!』

「うそ…」

思わず口を押さえた。
ガタン、とテリーがお風呂から出た音がした。
ミレーユは慌てて水晶に布をかけて鞄に仕舞い、台所に立った。

(イザが一番したいことが、私といることだなんて…そんな、うそみたい)

立ったまま、空のコップを持って思考にふけった。

(おばあちゃんったら、水晶でお話できるからって。
諦めようとおもってたのに諦められなくなっちゃうわ…)

「ねえさん?」
テリーの声がして振り返る。
「空のコップもってなにやってんだ?」
「え?あ…」

やれやれとテリーは肩をすくめる。

「家を空けてた時間は俺のほうが長い、
とうさんとかあさんは俺がいるから大丈夫だ。
ねえさんはばあさんのとこでも行ってくればいいさ」

お題配布元:http://members2.jcom.home.ne.jp/seiku-hinata/index.html

かすめた指先

いつだって驚くほど美しい。
最初にサンマリーノで会ったとき、はっと心を奪われたことを思い出しては、あのときの彼女の表情が焼きついてはなれなくて、ぼけっとしてしまう。

ミステリアスな雰囲気でひどく魅惑的な瞳で、魔法漂わせて変に演出してくれちゃってたから今でも忘れられない。
まあ忘れる必要もないんだけど。

自分の中では最初に会ったのはサンマリーノになっているけれど、本当は違う。
ハッサンがレイドック城に忍び込んできたように、ミレーユもまた、グランマーズに導かれてレイドックにやってきて出会った。
ただ、ゼニス王の贈り物であった夢の自分の時間が長くて、昔のことはあまりしっくりこないので、ミレーユが人間不信だけど使命感に燃えた冷たい炎を抱えて名乗ったあの時のことはあまり思い出したくない。

「なにしてるの?」
「っ、ミレーユ」
いきなり顔を覗き込まれて驚いた、今まさに考えていたひとがその美しい顔を視界に割り込ませるから心臓がばくばくいってる。
「買い物終わったわよ、馬車に戻りましょ」
「あ、ああ」

ミレーユの華奢な指が、腕をちょっと引いて去っていく。
その指が惜しくて、とっさに手を伸ばす。
金色の波がふわっと振り返って、花のようないい香りがした。

「あら、なに?買い忘れでもある?」
「あ、いや、なんでも」

恥ずかしくなってぱっと手を引き戻す。
いつになったら彼女にまともに触れられるだろう。

ああ、好きなんだ、その一言が言えない。


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