忍者ブログ

天球ギャラリー

小説、イラストの保存庫です。
MENU
このサイトは次のURLに移転しました。
http://ten.zemlyan.com/
新URLへ移動します。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

agony2

その晩、懐かしい我が家のベッドで横になっているのにどうもなかなか眠れなかった。
寝返りを打つと、母がこちらを見ていて目が合う。

「ねれないの?」
「かあさんがさっき言ってたこと、思い出しちゃって」
目線をはずして、布団を持ち上げる。
「ふと考えたりとか、思い出したりとか…目で追っちゃうとか」
「じゃあ、手を繋いだらいやかしら、抱きしめられたら?キスされたら」

イザが自分にそんなことするなんて、と、ミレーユは軽く想像して恥ずかしくなって手で顔を覆った。

「ミレーユ」
母が優しく声をかける。
「恥ずかしいことじゃないわ。もっと堂々としなさい、確かめてみればいいのよ」


市場の路地を歩きながら、意識は右腕にいく。
シェリスタに被せられそうになったヴェールの代わりにイザに同行してもらうことにしたが、腕を組んで歩く必要まではなかった。

(ちょっと、やってみようと思った)

みんな仲間は寝ているし、シェリスタが見ていると思ったら妙にやってやろうという気になったのだ。

(イザと腕組んでる、あたし)

イザの腕に自分の腕を絡めて、細い路地を通る。
自分のほうに町の人の視線が集まっているのがわかるけれども、ガンディーノの城にいくことになった昔のあの時とは違う。

(わたしのことをみんな見ているけど、いまはひとりじゃないわ)

「ガンディーノの町も変わったわね…」
イザがこちらを向く。
「色々町を見てきたけど、こんなに組が幅をきかせてる町もないな」
「昔はもっとだったのよ、町のあちこちにギンドロ組が立ってたの」

たまたま立っていたギンドロ組の組員と目が合うと、あっちが慌てて頭を下げる。

「怖かったわ、でもガンディーノって近くに全然町とかないでしょ。
ここは閉鎖的なのよね。ギンドロ組に抑えられてたころは、彼らの要求が全てだったわ。
外に出て、広い世界に出て、気づく事なんてたくさんあった…」
「世界は広いよ」
イザが苦笑する。
「こんだけ回って、もう一人の俺が見つからないんだから」
「そうね…、イザはまだライフコッドのイザだものね」
「ライフコッドだってあるかわからないよ」
「こっちのレイドックからは繋がってないのが不思議ね、あっちはあっちでレイドックとアモールが陸路で繋がってないし」

ぎゅっと、イザの手を握った。

「大丈夫よ、ガンディーノに一緒にきてくれたんだもの、今度はわたしがライフコッドまでついていくわ」
「ありがと、助かるよ」

太陽のような暖かいイザの微笑みが、握った手が、ミレーユの心を安心させる。
肩に頭を預けたくなる。クリアベールで抱き上げられたことを思い出す。

(ああ、わたしはこの人が好きなんだわ…)

ガンディーノ城を眺めるイザの横顔を見つめながら、この想いは心に秘めておこうとミレーユは誓うのだった。
PR

agony1

ガンディーノの家でこうしてまたキンモクセイのお茶を飲みながらぼんやりとできるなんて思いもしなかった。
ミレーユはティーカップを両手で包みこんで湯気が立つのを見ながら昔のことを思い出していた。
ギンドロの娘シェリスタの代わりにガンディーノの城に行くことになった日のこと、嘘ついて言い訳して、友達だったシェリスタと喧嘩したこと、弟がギンドロ組の人におさえられながらこっちを見ていたこと、そして弟の叫ぶ声…
―――ねえちゃんを、かえせーっ!

「ミレーユ」

はっと顔をあげると、いつも弟が座っていた席にイザが腰を下ろしたところだった。イザの優しい目線が心地よく感じられた。

「家族だんらんの邪魔をしちゃったかな。シェリスタさんがさ、みんな呼べっていってくれたんだけど…ミレーユは、ここのほうがいいか」
「うん、今日は家にいさせて」

イザは座ったばかりだったが立ち上がって、母のマルタに、ミレーユには世話になりっぱなしなんですと笑って頭を下げた。
じゃあまた明日、とイザが去ると、父のジャームッシュは戸口からミレーユに視線を移した。
あまりにしげしげと見つめてくるのでなんだろうと思ったら、
「あれがお前の亭主か」
と大真面目に言ったので笑ってしまった。

「何がおかしい、もう赤ん坊の二、三人、いてもおかしくない年頃じゃろうが」
「んもう、それどころじゃなかったんだから!」

それからギルドに入った話、マーズにお世話になり、イザ達に会い、魔王に挑み破れ、再び挑みなおした話…
ミレーユは父に言われたことをすっかり忘れて、いままでの話に明け暮れていた。


父が寝て、母とミレーユ二人でたわいもない話をしていると、母が急に安心したように目を閉じた。

「ミレーユ、変わったわねえ」
「そお?」
「昔より、よく笑うようになったわ」
「そうかしら」

旅の仲間たちは誰も彼もが個性派で笑いに困らない、それは確かだ。

「うちのみんな、面白いから」
「イザさんの話をしているミレーユはほんとうに楽しそうよ」
「イザですって?まあ、一番付き合いは長くて…テリーと同じくらいの年だからかしら、放っておけないところがあるの。でも誰よりしっかりしてるところもあって」
「ほら、今笑ったよ」
「!」

とっさに口元を手で覆った。

「あたしは…最初イザさんがうちにきたとき、ほら、おまえ、イザさんの後ろから出てきたじゃない、このひとがおまえをここに連れてきてくれたんだと信じて疑わなかったよ。
弟がいるからか、おまえはしっかりしてて、手もかからなくって、だからほんと…お城にいくのも一人で決めてしまって…シェリスタとは友達だったろうけど、やっぱりどっちかというとおまえのほうがしっかりしてたし…。
おまえが頼れるようなひとがいるんだと思ったら、あたしはうれしいよ」
「かあさん…」

母はゆっくり目を開けて、空になったミレーユのカップにお茶を注ぐ。
コポコポ…と紅茶が優しい音を立てて白いティーカップに広がり、ふんわりとキンモクセイの香りを漂わせた。
ミレーユは好きな香りに口元を綻ばせながら、熱いお茶を口に含んだ。

「で、イザさんとはどこまで進んでるの?」
「ぶっ」

涙に濡れたハンカチで噴出した紅茶をぬぐって、ミレーユは恨めしげに母を睨んだ。

「…かあさんまで」
「だって」
「イザは仲間よ、そりゃ頼れるともだちだけど…決してそんな関係じゃあ。大体、ずいぶん年下じゃないの」
「年は関係ないわよ。イザさん、いまでこそまだ若そうだけど、あれは将来立派になるよ」
「…」
「イザさんのこと気にならないのかい?」
「それは…まぁ、大切だけど…」

いつからか、イザが見えないとイザを探すようになった。
草原をハッサンやチャモロと走っていく彼の背中を見つめてしまうこともある。
彼を見ていると、微笑ましくて、温かい気持ちになる。
目が合って、声を聞いて、一緒に何かをしていると楽しい気持ちになる。
ぱっと感情を表に出せない自分と、見ているだけで幸せになれるような満面の笑みや心を打つような切ない顔をする彼が対照的で…

一度引き離された後出会った彼はたくましく、より純粋な部分を磨いたような青年になっていた。
前は女だからって気にもしなかったのに気を使うようになっていて…妹がいるのだと彼は言った。
あのときは特に何も感じなかったけれど、今は、そう、イザはレイドックの王子、ライフコッドの妹は本当の妹ではない、もう一人のイザとターニアはどういう関係なんだろう、考えると心に霧がかかる。
でも自分は思う、イザは弟に似ているから気になるのだと、決してそういう感情じゃない、と。

戦うことを避けている自分がいやで、もっとイザの役に立ちたくて、魔法戦士を選んだ。
イザにはパノンのことを思うときのような胸を焦がすような思いはないし、違うものだと思う。
…そう思いたい。

「だって、イザにドキドキしたりなんかしないわ」
「ドキドキだけが好きじゃあないのよ」
母は微笑んだ。
「なんでもないとき目で追っちゃったり、ぼーっとしているときに思い出したり、寝る前にふと考えたり、ほかの女の人と話してると嫉妬したりするものよ」
ミレーユはどきっとした。

(イザのこと、好き?…わたしが?)

つづきはこちら

× CLOSE

What's New

メニューはBlog上部にあります。
★ Readme>当サイトについて をご一読の上、自己責任でご閲覧ください★

HIT >>次480000

最終更新: 移転しました。(07/30)

管理人:古川晃
 

拍手・コメントなどお気軽にどうぞ

アンケート

Quickvoter

Q.第2回更新してほしいジャンル投票

主ミレ(DQ6)
主フロ(DQ5)
DQ9
海闇(遊戯王)
マテリアルパズル
その他
※作品傾向:エロ

ブログ内検索

management

アクセス解析

× CLOSE

Copyright © 天球ギャラリー : All rights reserved

TemplateDesign by KARMA7

忍者ブログ [PR]