「ほんと甘えん坊ね~」
ミレーユのやさしい声が聞こえる。
「んもう、どこ触ってるのよ。髪ひっぱらないで。…うふふっ、くすぐったいったら」
くっ、とイザは顔をしかめた。
「うらやましいでちゅか、イザちゅわん!ぷぷぷ…っ」
「ハッサン!」
御者台のイザとハッサンが大きく動いたので、ファルシオンが不満そうに嘶いた。
「モコモンにはああだよ、動物限定なの」
「おまえこないだ両思いかもしれないとか言ってなかったっけ?」
「…言ったさ」
人生初のアタックである。緊張もしたが、それ以上に舞い上がった。
そして今こうである。イザは焦れていた。
「お前も動物化してみたらいいんじゃねーか?」
「馬鹿いうよ」
「鼻は犬並みって言われてたじゃん?」
「モコモンみたいに触られるのもそりゃあ夢だけど…それってなんか違くない?」
「ミレーユに見せてあげたかったなぁ、お前がファルシオン口説いてた時を」
「…あれと一緒か?!」
「もしファルシオンが金髪白肌の美女ならどうだよ?!」
「しないよ!」
ハッサンは子供っぽく反論するイザをよしよしと撫でて、
「姐さん、代わってくれませんかねー?眠くなってきちまった」
と、幌をあげた。
「おまえ…」
「どうぞ、狭いけど」
ミレーユは腰を下ろすと、イザの横顔を見つめた。
「…なに?」
「見てるだけ」
「…ひどいよミレーユ」
ミレーユは楽しそうに笑った。
「ずっとみてたいものなの」
「みてるだけ?」
「じゃあ触るわ」
伸びてきた白い指が頬をつねった。
「む、いふぁい、みれーう」
「うふふ」
自分がもてあそばれているというか、自分で遊ばれているのだけれども、楽しそうにしているミレーユの顔は普段と違うのでついそのままになってしまう。
「俺も触っていい?」
「どうぞ?」
その余裕がなんだか悔しくて頬に手を伸ばした。
唇に指を乗せると、乾いて少しひび割れていることに気付く。
「ミレーユ、乾いてる」
「外じゃこんなもんよ」
「割れちゃうよ」
イザは身を乗り出した。
この先は想像にお任せします!!
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